WEDGE REPORT

2009年12月17日

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 ブームの呼び水を誘ったのは、若者をターゲットにしたユニークな展覧会プロモーションだった。

 展覧会は阿修羅像を所蔵する法相宗大本山興福寺(奈良)、東京、九州の両国立博物館、朝日新聞社、テレビ朝日、九州朝日放送の主催で企画・運営された。プロモーションを担当した朝日新聞社文化事業部の鈴木麻之氏は「日本でもっとも人気のある仏像、興福寺の阿修羅像の展覧会は、展覧会事業に関る者なら誰もが夢見る仕事ではないでしょうか。そんな二度とない貴重な機会をきっかけに、阿修羅ファン、仏像ファンのファンのすそ野をひろげたかった」と振り返る。

 実は阿修羅が東京に来たのは57年ぶり。昭和27年の日本橋三越でおこなわれた展覧会以来であった。悲願の実現に、関係者全員が強い意気込みを共有していたのである。

阿修羅ファンクラブ会長秘書のはなさん(右)と阿修羅ボーイ・後藤崇太さん

 プロモーションへの全力投球を誓った鈴木氏らのアイディアはおもしろかった。展覧会の先行前売券をつかって会員を募った「阿修羅ファンクラブ」は、阿修羅像に魅力を感じている人たちがそれぞれ積極的に展覧会に参加してもらえる場、“One to One”の関係をつくりたいと考えて始めた。会長は仏像エッセイ『見仏記』の著者・みうらじゅん氏。THE ALFEEの高見沢俊彦氏やモデルのはな氏など各界の阿修羅ファンも入会し、これまで仏像に縁がなかった若者にもアピールした。会員特典付きの先行前売券購入者にはファンクラブ会員章として阿修羅のシルエットを象ったバッジを配布。展覧会の“応援団”気分が味わえる。

阿修羅ファンクラブ会員バッジ

 さらに、10代女性がメイン・ターゲットの雑誌「JUNON」(主婦の友社)が毎年開催する美少年コンテスト「JUNONスーパーボーイコンテスト」に「阿修羅賞」を特設することを提案し、選ばれた18歳の阿修羅ボーイ・後藤崇太さんとともに、若い女性たちへ展覧会をアピールした。海洋堂制作が制作した初の興福寺公認フィギュアも、発売前から大きな話題となった。

こうしたプロモーション活動が知られてくると、ファンクラブ会員たちを中心に、ネット上で口コミが広がっていったという。口コミを誘うプロモーションから火がつき、自然と盛り上がりを見せていったのだ。

 mixi(ミクシィ)の阿修羅コミュニティでは、展覧会をネタにたくさんの書き込みがなされていた。

    「阿修羅像フィギュアヤバス(>_<)!! 」

 こんなふうに阿修羅を若者ことばで賛美するものもあれば、阿修羅のポスターが貼られている場所を知らせる書き込み、興福寺に行った思い出を綴る書き込みもある。mixiに代表されるSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)が、知らない者同士、でも同じ趣味でつながっている者同士を繋ぎ、阿修羅展を草の根的に盛り上げたことは大きい。また、すっかり浸透した個人ブログにおいても、展覧会の報告や情報を提供し合うやりとりが相次いだ。 ネット社会に増殖した草の根アシュラーたちの伝播力が、展覧会告知に大きく作用したのである。

6万円の阿修羅が、飛ぶように売れる

 企業も、じわじわと盛り上がった阿修羅ブームに乗っかった。

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