WEDGE REPORT

2016年5月20日

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 軽自動車の燃費偽装問題が表面化し、再び経営危機が取り沙汰されている三菱自動車工業は、日産自動車の事実上の傘下に入り、再建を目指すことになったが、自動車業界からは「予想された提携が少し早まっただけでは?」との見方が強い。三菱自と日産は軽分野で協業関係にあるほか、電気自動車(EV)など自動車の先端技術分野でも協力関係の構築を模索してきたという経緯もあったのだ。ただ、今回の提携によって三菱自が三菱グループから離脱する方向へ進む訳ではなく、むしろ日産が三菱グループへの関与を深めていくという見方も強まっている。

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 三菱自動車を巡る軽自動車の燃費偽装問題は、軽の次期モデルを共同開発している日産からの指摘で表面化した。日産は国内市場の拡販策として軽市場への本格参入を決断、2002年、スズキからOEM(相手先ブランドによる生産)供給を受けたのを手始めに、11年には三菱自との間で、軽の企画・開発を担う合弁会社「NMKV」を設立、開発への関与も深めている。さらに自社生産も模索、追浜工場(神奈川県横須賀市)での生産を検討していることも事実なのだ。

日産のテコ入れを歓迎する三菱グループ

 だが、軽の自社生産には専用エンジン(660cc)の開発や、新たな部品調達ルートの開拓などで膨大な開発・生産費用も必要になる。中でも軽専用の660ccエンジンは、市場が国内限りで、海外展開は望めず、開発コストの割りに、量産効果は少ない」(業界関係者)ことが、開発のうえでのネックとなっている。

 こうした事情から日産では軽の次期モデルについても「MNKV」を通じた三菱自との共同開発に舵を切った」(日産関係者)のだ。

 こうしたなか、表面化したのが軽の燃費偽装問題。対象車は日産ブランドの『ディズ』、三菱ブランドの『ekワゴン』など4車種だが、「他の三菱車にも拡大し、問題は長期化する可能性が高い」(業界関係者)とみられているのだ。この問題は三菱自だけではなく、日産も直撃した。『ディズ』は日産にとって国内最量販車になる程に成長しており、日産の国内営業に与える影響も甚大なのだ。一部では、「日産は三菱自との協業を打ち切って、軽の自社生産を決断」などの報道もあったが、日産のカルロス・ゴーン社長は素早く動き、三菱自へ34%程度出資し、事実上の傘下に収める決断をしたのだ。

 その背景にあるのは三菱自のかつてのリコール隠し事件では全面的に支えた三菱グループも三菱重工業が豪華客船の引渡し遅れで巨額の特別損失を出したほか、益子修会長の出身母体である三菱商事も資源価格の下落などで創業以来の赤字に転落するなどこれ以上、三菱自を支援するのは困難なのだ。むしろ、三菱グループの主要各社は「日産のテコ入れ」を歓迎する方向にある。

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