野嶋剛が読み解くアジア最新事情

2016年5月20日

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野嶋 剛 (のじま・つよし)

ジャーナリスト

1968年生れ。ジャーナリスト。上智大学新聞学科卒。大学在学中に香港中文大学に留学。92年朝日新聞社入社後、佐賀支局、中国・アモイ大学留学、西部社会部を経て、シンガポール支局長や台北支局長として中国や台湾、アジア関連の報道に携わる。2016年4月からフリーに。著書に『イラク戦争従軍記』(朝日新聞社)、『ふたつの故宮博物院』(新潮選書)、『謎の名画・清明上河図』(勉誠出版)、『銀輪の巨人ジャイアント』(東洋経済新報社)、『ラスト・バタリオン 蒋介石と日本軍人たち』(講談社)、『認識・TAIWAN・電影 映画で知る台湾』(明石書店)、『台湾とは何か』(ちくま新書)。訳書に『チャイニーズ・ライフ』(明石書店)。最新刊は『タイワニーズ 故郷喪失者の物語』(小学館)。公式HPは https://nojimatsuyoshi.com

 選挙というのは、中にいると得てして難しく考えてしまうし、実際に内部の人間関係や利害関係はたいへん重要な要素であるのだが、やや離れたところから冷静に結果だけを見てみると、「こうしてれば良かったのに」とあっさり分析できてしまうことも多い。

派手なフィリピン選挙のポスターの洪水。マニラ市内で(著者撮影)

強いと思われた陣営が負ける普遍的な理由

 特に「敗因」を知ることは「勝因」を知ることよりも容易いものだ。そして、どの国でも、国政でも、地方でも、選挙において強いと思われていた陣営が勝利をつかみ損ねる最も普遍的な「敗因」は、分裂選挙に陥ることである。それが、9日に投開票が行われ、選挙戦当初は有力候補とは思われていなかったダークホースのダバオ市長、ロドリゴ・ドゥテルテ氏の勝利が確実になった今回のフィリピン大統領選にもぴったりあてはまる。

 フィリピンのお隣の台湾総統選では、2000年に民進党の陳水扁が勝利し、台湾にとって歴史的な転換点となる政権交代を成し遂げた。その際、国民党が分裂して、連戦と宋楚瑜の2人が出馬し、結果的に得票率40%に満たない陳水扁が勝利した。連戦と宋楚瑜の得票を足せば陳水扁の得票を大きく上回ったことは言うまでもない。分裂が台湾の歴史を動かしたのである。日本でも歴史的事件となった1993年の自民党の下野と細川政権の誕生は、自民党経世会の分裂が原因だった。

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