この熱き人々

2016年6月20日

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吉永みち子 (よしながみちこ)

1950年、埼玉県生まれ。85年、『気がつけば騎手の女房』で大宅壮一ノンフィクション大賞を受賞。著書に『母と娘の40年戦争』(集英社文庫)、『怖いもの知らずの女たち』(山と溪谷社)、『試練は女のダイヤモンド』(ウェッジ)などがある。

 舞台、映画、ラジオ番組のナビゲーター、さらには国際的評価の高い映画祭の主宰。とどまるところを知らない挑戦が俳優としての表現の土壌を豊かにし、揺るぎない存在感をもたらしている。

 横浜のみなとみらい21地区。日本で唯一の常設の短編映画専門の映画館「ブリリア ショートショート シアター」は、みなとみらい駅からほど近い、高層や超高層の集合住宅が並ぶ一角にあった。黒を基調にした小さな喫茶店のようなロビーを抜けると、赤い絨毯の階段が劇場内へと誘う。カンヌ映画祭のフェスティバルホールと同じ深紅の椅子に腰かけた別所哲也は、舞台、映画、ミュージカル、テレビドラマなどでなじんでいる俳優・別所哲也の顔で華やいだ雰囲気を漂わせている。

 が、2008年に世界でも珍しいこの短編映画館を誕生させたのは別所自身であり、1回1時間で5本から6本の作品を上映するために世界中から作品を集め、運営に当たっているのも別所なのである。そのために劇場開設の1年半前に設立した会社の社長でもある。

 「最初は、短編映画をかけてくれる映画館を探したんだけど、日本にはそういう興行スタイルが確立されていないということがわかった。ないのなら自分で作ろうと思ったけど、周囲の人たちみんなが反対しました。単館の映像上映施設を作るなんて採算とれないし、ビジネスとしてありえないからやめとけって」

 失敗を心配するだけでなく、何も俳優がそんなことまでしなくてもいいじゃないかという思いも周囲にはあったのだろう。常識的に考えればまさしく正論である。が、それらの声は、別所を思いとどまらせることはできなかったということになる。

 「それなら新しい時代の映画館の上映スタイル、運営方法、経営モデルを作れないかと思ったんです。それと、シアターが短編のクリエーターが集まれる場所になり、また町の井戸端的な場としての機能を持てたら面白いんじゃないか。銭湯に行く感じ、買い物のついでや歯医者帰りなどに立ち寄れるコミュニティーシアターという発想で、とにかくスタートしました」

 思いを走らせてから5年かけて開設にこぎつけ、今年で8年目を迎える。夢先行型なんですと笑って振り返る顔は、まさしく時代を切り拓くベンチャービジネスの起業家を彷彿とさせる。短編作品を上映できる場所が何としてもほしいという思いを掲げて突き進んでいく潔さと熱気が感じられる。

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