サムライ弁護士の一刀両断

2016年6月6日

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鈴木健文 (すずき・たけふみ)

弁護士

弁護士。敬和綜合法律事務所、ケルビン・チア・ヤンゴン法律事務所所属。2009年登録。東北大学法学部卒業、首都大学東京法科大学院修了、南カリフォルニア大学法学修士(エンターテインメント法)。日本では、M&Aアドバイス、知的財産法務、金融法務、渉外法務等に従事。2015年9月からミャンマー、ヤンゴン市にて執務中。日本企業に対して、ミャンマー進出支援、知的財産法務、労働法務、金融法務などのアドバイスを提供している。また、2016年4月からは、法務省の委託を受け、ミャンマーにおける日本企業・邦人に対する法的支援のあり方を調査・研究している。
 

ミャンマーの不動産事情

 2011年に民政移管されて以来、ミャンマーへの投資熱は急上昇し、外国人がミャンマー、特にヤンゴンに数多く来訪するようになった。それに伴い、長期滞在・短期滞在を問わず、ヤンゴンの不動産需要も急上昇し、賃料やホテルの宿泊料は高騰した。

 現在は少し落ち着いたと言われるが、それでも日本人駐在員などの外国人が住むアパートメントの月額賃料は、20万円を超えるものがほとんどで、40万円を超えるものも多い。その多くがサービス付きのアパートメントだが、アジア最貧国にも数えられるミャンマーの人件費や物価を考えると、不釣合いなまでに高い。私は、ヤンゴンのダウンタウンで、特別なサービスのないローカルコンドミニアムを借りている(ヨーロッパ人は見かけるが、日本人が住むことは珍しい)。

 ミャンマーでは、未だ安定的な電力供給がなく、頻繁に停電が発生する。私のアパートメントには、停電のバックアップ施設はないため、頻繁に不便な思いをするし、頻繁な停電のためエレベーターの故障も多い。おまけに、ネズミに侵入されたこともある。このようにサービスレベルは低いものだが、賃料水準は東京と同程度である。しかも、ミャンマー特有の商慣習として、1年分あるいは半年分程度の賃料を前払いするというものがある。私も1年分を前払いし、商慣習の違いに驚いたものである。また、ホテルの宿泊料も、数年前まで一泊7-80ドルだった5つ星ホテルが、現在ではその2-3倍程度にもなっている。

不動産長期利用の原則禁止

 ミャンマーでは、原則として、外国人・外国企業による不動産の長期利用は認められていない。

 不動産譲渡制限法(The Transfer of Immovable Property Restriction Act (1987))により、いかなる者も、外国人又は外国保有会社に対する、不動産の売買や贈与、抵当権設定などあらゆる手段による譲渡はできず(3条)、1年を超える不動産賃貸も禁止されている(5条(a))。これは「譲り渡す」行為の禁止だが、「譲り受ける」行為、つまり外国人又は外国保有会社が不動産を譲り受けること、あるいは1年を超える賃借も、別途禁止されている(4条、5条(b))。

 なお、外国保有会社とは、外国人が経営をコントロールしているか、あるいは50%以上の株式を保有している会社のことを指す(2条(c))。この定義は、外国資本を1株でも含む全ての会社を「外国会社」とするミャンマー会社法(The Myanmar Companies Act(1914))とは、少々異なっている。しかし、会社法上の「外国会社」の定義が実務をコントロールしているため、1株でも外国資本が含まれていれば、不動産譲渡制限法による制限も受けることになる。

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