2024年4月26日(金)

サイバー空間の権力論

2016年6月6日

 生体認証と聞いて何を思いつくだろうか? 最もベーシックなものは「指紋認証」であろう。犯罪捜査で利用されたり、外国人登録等の場面で指紋捺印を求められたりすることからネガティブなイメージが強いが、生体技術としては古くから用いられているシステムだ。

 他人からの無断使用防止として、スマホに搭載されているパスコードを利用しているユーザーは多いだろう。パスコードの他にもiphoneには指紋認証機能が搭載されている。これはアップルが2012年にモバイル関連のセキュリティ企業で、指紋認証技術に秀でたオーセンテック社を3億5500万ドルで買収したことに端を発する。

 グーグルもまた生体認証技術の開発を進めている。グーグルは生体認証やユーザーの行動履歴などを幅広く利用して本人確認を行うシステムを、「Project Abacus」という名前で2016年夏頃から試験運用すると発表している(http://jp.techcrunch.com/2016/05/24/20160523google-plans-to-bring-password-free-logins-to-android-apps-by-year-end/
)。

 グーグルの目指す認証はスマホを利用するものだ。スマホには多くのセンサー技術が導入されている。位置情報といったものから、写真による顔認証や録音技術による声紋の照合など、様々な生体認証を含めた技術によってパスワードの代わりにスマホひとつで本人確認を行うものである。こうした技術が進むことで、従来のパスワードは不必要になると言われているのだ。

一つの生体情報で多数のサービスが利用できるように

 生体認証技術は指紋の他にも、前述の顔データや声紋、さらには眼球運動や静脈運動のパターンなどから個人の特定を可能としている。これらを可能にするのは認証技術そのものの発展に加えて、スマホなどに搭載されるセンサー技術の低価格化にその一因がある。近年のセンサー技術は人工知能技術などを加えることで、監視カメラの映像から個人の特定を可能にしたりと、賛否は別にせよ目覚ましい発展を遂げている。いずれにせよ、センサーの低価格化によって生体情報をより高精度で認識することが可能となる。

 加えて、生体認証技術は今後様々な領域に進出が予想される。それは、従来の1対1の認証技術に対して、今後は1対多数の生体認証技術が可能になるからだ。どういうことか。


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