BIG DEAL

2016年6月7日

»著者プロフィール

 皆さんこんにちは。桂木麻也です。

 WEDGE6月号でもお伝えした通り、これからはWedge Infinityにて筆を執ることになりました。今日の日本において、M&Aに関わるニュースがない日はありません。この原稿を書いている6月1日時点、においても、「三菱商事・三井物産が戦後初の赤字決算」、「新日鉄住金、合弁先とブラジル事業を分割へ」、「パナソニック、TVパネルから完全撤退」と、会社の経営戦略・財務戦略に直結する様々な記事が並んでいます。これらは直接・間接にM&Aを誘発するものですし、それを巡って様々な投資銀行やアドバイザリーファームがハイエナのように集まってきます(笑)。そんなM&Aと投資銀行を巡る動きについて、従前にも増しておもしろおかしくお伝えしていきたいと思いますので、今後ともどうぞご期待下さい。

iStock

 さて、最近のM&Aのトピックの中でも最も話題性が高いのは、三菱自動車工業が日産自動車の傘下に入ることになったという一件であろう。燃費試験データの不正改竄があったと三菱自工が記者会見を開いたのが、4月20日。過去のリコール隠しに続いて二度目の不祥事を起こした三菱自工であるが、同社に対する非難も冷めない5月12日、日産自動車が約2380億円を出資して三菱自工の株式の34%を取得すると発表した。まさに電撃的である。

人の不幸は蜜の味

 不祥事や事故は、その規模が大きくなると経営の根幹を揺るがし、企業の存続を危うくさせる。東京電力の福島第一原子力発電所の事故はその最たる例だ。東電の場合、事故の規模があまりにも大きいことと、事業の公共性が非常に高いことから、第三者に売却されることなく国の管理下に入っているが、不祥事等によって身売りのM&Aが誘発された例は多い。古くはカネボウが粉飾決算により産業再生支援機構の傘下に入り、後に花王やクラシエに売却された事例があるし、直近では東芝がやはり不正会計問題によって財務体質を大幅に悪化させ、白物家電事業や医療機器子会社の売却を行っている。意地悪な見方をすれば、ある会社がSpecial Situationに陥れば、その会社のライバル企業にとってオイシイM&Aの機会が突如出現することになるということなのだ。人の不幸は蜜の味といえば、さすがに品性を疑われるか。

 三菱自工のデータ改ざんの発表は5月20日だが、三菱側が日産に報告を行ったのは18日だと言われている。カルロス・ゴーン社長は、瞬時に三菱自工がSpecial Situation化することを察知したに違いない。世界販売1000万台を誇るトヨタの追撃に執念を燃やすといわれるゴーン社長だが、正に千載一遇のM&A機会が出来した瞬間だったのである。不正の発覚以降は皆さんもご承知の通り、度重なる不祥事を起こす三菱自工のガバナンスの不備に対する非難や、三菱グループが再度支援するかどうかなど、ゴシップ的話題も含めて賑やかな報道合戦が続いた。

 その間、ゴーン社長は三菱自工を日産グループ入りさせることのメリット・デメリットを様々なアングルから分析し、そして最終的には三菱に傘下入りを飲ませた上で5月12日の発表を実現したわけである。この判断が正しかったかどうかは時間の経過がおのずと答えを出すであろうが、成熟した自動車産業に突如発生した大再編劇の行く末を注視していきたい。

関連記事

  • PR
  • 新着記事

    »もっと見る