2024年4月26日(金)

赤坂英一の野球丸

2016年6月8日

 ところが、それほど強打者ぞろいのソフトバンクにあって、今宮は唯一、犠打でレギュラーの座をつかんだ選手なのである。2009年秋のドラフト1位で大分・明豊高から入団し、3年目の12年から大リーグのシアトル・マリナーズに移籍した川崎宗則に代わるショートとして一軍に定着。犠打数は13年から62、62、35と3年連続でリーグ最多を記録しており、チームも14、15年と2年連続でリーグ優勝と日本一を達成している。今季、ソフトバンクが3連覇するためにも、絶対に欠かせない貴重な戦力と言っていいだろう。

 巨人・川相の533犠打は長らく「今後絶対に更新されない世界記録」と言われてきた。川相が巨人の主力選手だった1980~90年代以降、メジャーリーグの影響もあって野球の質が大きく変わり、無死から走者が出ても手堅く送りバントで進めるのではなく、強攻策やエンドランなどでチャンスを広げ、大量点を狙う野球が主流になってきたからだ。現に最近のセ・リーグでは、川相が打っていた2番にヤクルト・川端慎吾、広島・菊池涼介らアベレージヒッターを置くチームが目立つ。

決定的な1点取るために

 そうした中、日本一強いチームにあって、犠打で貢献してきた今宮はこう言っている。

 「ぼくがしっかりと送りバントができれば、チームもいろんな作戦ができる。これができなければ使ってもらえません。プロでやっていく中で、大事な仕事だと思っています」

 いまも昔も、決定的な1点を取るのに犠打が極めて重要な作戦であることに変わりはない。今宮の存在は、野球で勝つためには自己犠牲の精神を持った選手がいかに大切かを教えてくれる。ソフトバンクが強いわけだ。

  
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