世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2016年6月14日

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 ドゥテルテがフィリピンの大統領に就任すると、南シナ海での領有権問題で中国と妥協するのではないかということが懸念されています。事実、ドゥテルテは選挙中に、中国がインフラ整備などで経済支援を行えば、領有権争いを棚上げにすると言っています。

 また南シナ海の領有権争いで、米国が対立を煽っているとして、その扱いを批判しています。しかし、他方でドゥテルテは、「南シナ海の人工島に水上バイクで乗り込んでフィリピンの国旗を立てる」とも言っています。また、米国との関係についてはPBSとのインタビューの中で、「誰も戦争は望んでいない。従ってフィリピンは米国と同盟関係にある」とも言っています。

熟慮の末の発言ではない

 要するに、南シナ海問題についてのドゥテルテの発言は熟慮の末の発言とは思われません。そもそも、今回の大統領選挙で、南シナ海問題を含む外交問題は争点ではありませんでした。ドゥテルテが一番強調したのは、治安、貧困対策であり、それが現状に不満を持つ国民の多くに支持されたのです。従って、現時点で、ドゥテルテの南シナ海に関する発言にあまり神経質になる必要はありません。

 しかし、ドゥテルテ政権の課題の中で優先度がそれほど高くないとはいえ、南シナ海問題は極めて重要な問題です。我が国、米国、他の関係国は、ドゥテルテがこの問題にどう対処するのかを注意深く見守るとともに、ドゥテルテが問題の重要性を正しく認識し、適正に対処するよう、働きかけるべきです。
  
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