前向きに読み解く経済の裏側

2016年6月27日

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塚崎公義 (つかさき きみよし)

久留米大学商学部教授

1981年、東京大学法学部卒業後、日本興業銀行(現みずほ銀行)に入行。主に調査関連部署に勤務した後、2005年に銀行を退行して久留米大学へ。著書に『増補改訂 よくわかる日本経済入門』(朝日新書)、『老後破産しないためのお金の教科書』(東洋経済新報社)、『世界でいちばんやさしくて役立つ経済の教科書』(宝島社)、『なんだ、そうなのか! 経済入門』(日本経済新聞出版社)など多数。

話術に騙されない注意が必要

 「日本国内で最近逮捕された凶悪犯罪者について、犯行前1週間の食生活を調べてみました。なんと、90%以上の凶悪犯罪者が共通して食べていた食材があったのです。そんな危険な食材は直ちに禁止にすべきだと思います。皆さんも、是非御賛同下さい」。と言われたら、賛同しますか?

 その前に、消費税の話をしましょう。与党が消費税を増税しようとしていて、野党が反対しているとしましょう。野党の演説会で「消費税を上げたら消費を減らすか、というアンケートをとったら、実に7割もの回答者が買い物を減らすと答えたのです。消費税が上がったら大不況が来ると覚悟しなければなりません」と言ったら、どうでしょう?

 消費税が上がったら、給料で買える物が減るわけですから、普通の人は買い物を減らすはずです。7割の人が買い物を減らすと聞いても、特に違和感はありません。むしろ、消費税が上がっても今まで通り買い物をする人が3割もいる、ということに驚くほどです。

 そこを、「少しだけ買い物を減らす人が7割いる」と言わずに、「買い物が7割減る」というような響きを持たせて発言されると、何となく大不況が来そうな気がしてしまうので、要注意でしょう。

 さて、凶悪犯罪者の食材の件、賛同しますか? 問題の食材は「コメ」ですが。「凶悪犯罪者の9割以上が食べているが、凶悪犯罪者以外の一般人はほとんど食べていないもの」ならば、禁止を検討しても良いと思いますが、一般人も食べているものであれば、禁止する理由は無いですよね。

 そもそも食材と犯罪に因果関係があるのか否かはわかりませんが、仮にあるとしても、調べ方は慎重である必要があるでしょう。「犯罪者の食べた食材」と「一般人の食べた食材」を比較してみることは、初歩の初歩です。それを怠っている事に気付かせないような巧みな話術を持った人もいるので、気をつけたいものです。

  
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