WEDGE REPORT

2016年6月24日

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田村明子 (たむら・あきこ)

ジャーナリスト

盛岡市生まれ。1977年米国に単身留学し、1980年から現在までニューヨーク在住。著書に『ニューヨーカーに学ぶ軽く見られない英語』(朝日新書)、『知的な英語、好かれる英語』(生活人新書)、『女を上げる英会話』(青春出版社)、『聞き上手の英会話』(KADOKAWA/中経出版)など。翻訳書も多数。フィギュアスケートライターとしても知られており、『銀盤の軌跡』(新潮社)などの著書もある。

かつてタブーだった地下鉄の居眠り

ニューヨークの地下鉄ホーム(iStock)

 筆者がニューヨークに移住した当時、地下鉄の中で寝ているのは、ホームレスの人くらいのものだった。

 一般人は、絶対に車内で居眠りなどしなかった。その理由は今より治安が悪かったためである。

 地下鉄でもバスでも、居眠りして隙だらけの姿を公共でさらしては、スリなどの格好の餌食になる。ニューヨーカーたるもの、一歩家から外に出たら毅然として常に周りに注意をはらうのが常識だった。

 筆者はまだ学生だった当時にマンハッタンのバスの中でうとうとしていて、黒人のおじいさんに起こされたことがある。

 「居眠りなんかして危ないよ。Be careful!(気をつけなさい!)」と言われて、恥じらいながらお礼を言って肝に銘じたものだった。

 そんな生活に慣れて日本に一時帰国をすると、今度は東京の電車では横並びに座った乗客たちがいっせいに眠りこけているのが物珍しく、壮観に見える。

 「ああ、平和な日本に帰ってきたなあ」と実感し、数日もすると自分も一緒になって居眠りをしているのであった。

 滞在を終えて再びニューヨークに帰ってくると、自動的に体も心もニューヨーカーモードに戻る。そんな日常を繰り返していた。

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