2024年4月25日(木)

野嶋剛が読み解くアジア最新事情

2016年6月23日

 記念館の展示は天安門事件に関することばかりではない。天安門事件が起きた89年以来、中国で不当な拘束や軟禁、有罪判決などを受けた活動家や共産党と異なる意見を持った人々のために、香港社会がその無事を祈り、抗議に立ち上がり、支援してきたかの記録が詳細に展示されていた。

香港市民支援愛國民主運動聯合會

 そのなかには、日本でも高い関心を呼んだ人々の名前もあれば、日本ではあまり知られていない人々もいる。いずれも香港人が「自分の問題」として声援を送った人々の名前が記されていた。「支聯会」の正式名称は「香港市民支援愛國民主運動聯合會」という。そこにある愛国の文字。記念館の展示は、香港人の「愛国」の記録であり、返還後に生まれた「愛国愛港」運動の一つの象徴なのである。

 例えば、2010年の四川地震で「豆腐工程」(おから工事)と呼ばれて批判された手抜き工事を告発した譚作人が5年の実刑判決を受けた時、香港では中聯弁の前でデモが起き、人々は頭を剃って抗議の意思を示した。11年にアーティストの艾未未が身柄を拘束されたときには香港では各地で艾未未の似顔絵を書いて抗議した。12年に盲目の民主活動家の陳光誠が米国の領事館に逃げ込んだ時はサングラスをかけてデモに参加して抗議している。14年には、北京の人権活動家の許志永が有罪判決を受けた時も香港の人々は釈放を求めてデモを行っている。もちろん劉暁波やその妻の劉霞、天安門の母親たちに対する香港の寄せる関心は世界で最も継続的であり、親身なものだった。


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