2024年4月18日(木)

対談

2016年6月22日

久松:ただ、たとえば福島県内での農業を諦めて移住して、移住先から福島に残った人たちを批判するような人を見ていると、自分の歴史に社会を巻き込むな、自己肯定のために他人の歴史を踏みにじるな、という憤りは少し感じますね。

左藤:原発事故以外のきっかけで辞めていく人は?

久松:たくさんいますけど、夜逃げ同然に辞めていくのはもったいないと思うんですよね。「今までありがとうございました」と挨拶するだけで、また戻ってきてもみんな応援してくれるのに。

 技術もあり、当座の運転資金もあっても、人間関係のメンテナンスができない人はできないんですよね。人によって苦手なものがあるのは仕方ないから、奥さんとかに任せたっていいと思うんだけど。僕も苦手なほうだったけど人を雇うと責任も出てくるから、近所の人とも戦略的に仲良くするようになりました(笑)。笑顔で済むんだったら安いものじゃん、と。トラブルがあったらすぐに行って謝るし、本気で存続させたいんだったらそれくらいできるでしょ? という気持ちもありますね。

左藤:朝、近所の人に会ったら「おはようございます!」と元気よく挨拶しておくだけでだいぶ違いますよね。騒音を出すこともあるけど、挨拶もしていないと即トラブルになっちゃう。

久松:畑から野菜が盗まれたこともあって、その時に「ご近所みんなに挨拶しよう」と思いました。目を見て挨拶して、それでも盗まれたらしょうがない(笑)。あれは実損以上に気持ち悪さが残るんですよね。

左藤:関係性を築けないから続かない、というのは実感としてよくわかります。耕作放棄していなくなる人もいるんですか?

久松:いっぱいいますよ。そういう逃げ方をするのは大したことはやっていない人たちだから、周りにそれほどの害もないんですけど、でも何年もかかって徐々に折れていくのかなあ……

左藤:ある時にボキッと、ではなくて、氷がだんだん溶けていくように先細りしていくんだけど、まるっきりゼロにもならない……そういうイメージは自分自身にもあります。昔やっていた新聞配達の仕事でもやりながら細々とガラスもやろうかな、などと逃げ場も妄想するし、実際に逃げたくなったらそうすると思うんだけど、でもガラスを完全に辞めたいと思ったことはないですね。だから辞めるときはよっぽど嫌いになって辞めるんだろうな、って。

久松:腕が良くても飽きちゃって辞めた先輩もいましたね。マンネリ化しないように工夫しなきゃいけない、というのは僕の持論なんです。


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