対談

2016年6月23日

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「思想」からも「運動」からも離れて

久松:左藤さんはいわゆる「民藝」の世界には身を置かないでやっているんですよね。つまり今のクラフトの世界では主流派ではないということですか?

※民藝
柳宗悦、濱田庄司、河井寛次郎などが中心となり1910年代から展開された「民藝運動」は、無名の工人による日用雑器や、朝鮮半島の磁気などの美術的に評価されてこなかった工芸品に「用の美」を見出し、広めていくものだった。柳を初代会長として設立された「日本民藝協会」は、現在は各地に30ある民藝協会の連合体として運営されている。

左藤:はい。久松さんの本を読んでいて驚いたのは、僕にとっての民藝と、久松さんにとっての有機農業がすごく似ていることだったんですよ。どこの世界にもコアのはっきりしない思想があって、しかも原理主義者もいるんだな、と。僕は有機農業にはコアがあるんだと思っていたんですけど、実はそうじゃないんだというのがわかりました。民藝も、コアは初めからないんです。

ガラス作家の左藤玲朗さん(右)、農家の久松達央さん(左)

久松:思想的にも、技術的にもないんですか?

左藤:柳宗悦が選んで皆に提示した工芸品はあるんです。そこに柳が「こういう道筋で作られたものは必ず優れている」と思想的な説明を付ける。その理論を解き明かしたものが著書『工藝文化』なんですけど、よく読むと矛盾がたくさんあるんです。

 彼の主張は簡単にまとめると、「昔は良いモノがたくさんあった。でも貨幣経済が発達して問屋ができてくると、彼らが工人たちに苛烈な要求をするようになる。工人は卸値を安くするためにまず材料の質を落とす。量の要求に応えるために作業時間も短くなり粗悪化する。そして産業革命で決定的に悪くなる」というものです。じゃあ「良いモノ」の時代に、なぜ工人たちはすぐれた仕事ができたのか。柳は「伝統に則って作られていたからだ」「素朴な信仰心がそうさせた」と説明するんです。

 そんなはずないですよ。伝統が最初からあるはずない。誰だってそう疑問に思うはずなんですけど、柳は文章が上手いんです。繰り返しを多用した美文で、陶酔感があるからすいすい読めちゃう。

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