山田清機がいく5年後のいわき

2016年7月8日

»著者プロフィール
閉じる

山田清機 (やまだ・せいき)

ノンフィクションライター

1963年生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、鉄鋼メーカー、出版社勤務を経て独立。著書に、『中国ビジネスは俺にまかせろ 上海の鉄人28号古林恒雄』『東京タクシードライバー』、『東京湾岸畸人伝』、『伝説の保育士 のりこ先生の魔法の言葉』などがある。

 いわきを取材してみませんか――。

 こう編集者から誘いを受けたのは、昨年の9月のことだった。「いわき」とは福島県いわき市のことである。いわきには原発事故で帰還困難地域に指定された双葉町や浪江町、あるいは居住制限地域に指定された、大熊町、富岡町など、いずれもいわきの北に位置する地域からの避難者が多く流入しているという。

 また、廃炉作業に従事する作業員や技術者の多くもいわきに宿泊しているため、いわきのホテルは常時満室状態であり、そうした人々を当て込んだ飲食業や風俗業が賑わいを見せているというのだ。

 いわき市が公表している人口は約35万人(平成16年2月現在)だが、住民票を移さないまま避難してきている人が相当数おり、ホテルに長期滞在している人も含めると、原発事故以降、いわきの実態的な人口はかなり増加しているらしいのである。

よくも悪くも“熱い”街

iStock

 つまり――不謹慎な表現を敢えてすれば――いわきは原発事故バブルの状態にあるのではないか。そこは人間の欲得や悲喜こもごもが渦巻く、よくも悪くも“熱い”街なのではないか……。

 正直なところ、私はいわきについてほとんど何も知らない。学生時代に自転車でツーリングをしたとき、寝袋で野宿するのに疲れて、いわきの民宿に一度だけ飛び込みで泊めてもらったことがあるばかりだ。

 その時、夕食に出たアジの塩焼きが異様にうまかったのを覚えている。今朝、浜に揚ったアジだから新鮮なのだと民宿の人が言ったが、浜の名前はおろかその民宿の名前すら覚えていない。覚えているのは、夜中に見に行った海岸の波がとても荒かったことだけである。

関連記事

  • PR
  • 新着記事

    »もっと見る