2024年4月18日(木)

海野素央のアイ・ラブ・USA

2016年6月22日

トランプのルート270

 12年米大統領選挙では、オバマ大統領の選挙人獲得数は332であったのに対して、共和党候補ミット・ロムニー元マサチューセッツ州知事のそれは206でした。ロムニー候補は、過半数270までに選挙人が64足りなかったことになります。この選挙人獲得数をベースにした場合、トランプ候補はどのようなルートを用いて選挙人64を上積みして頂点の270に到達できるのでしょうか。

 トランプ候補は予備選挙で、「さびた工業地帯」と呼ばれる東部ペンシルべニア州及び中西部ミシガン州を本選で獲得すると豪語しました。08年及び12年米大統領選挙で、オバマ大統領は両州で勝利を収めています。同候補は、演説の際、両州における製造業の減少を示す統計を持ち出して、クリントン候補の夫であるビル・クリントン元大統領が署名した北米自由貿易協定(NAFTA)が原因であると繰り返し主張しています。

 その結果、トランプ候補は労働者階級の支持を得るのに成功しました。筆者が戸別訪問を行った際、クリントン陣営が標的とするミシガン州ディアボーン在住の労働組合員の中にトランプ支持者がいたのです。ミシガン州はクリントン候補がバーニー・サンダース上院議員(無所属・バーモント州)に20ポイント以上の差をつけていましたが、最終的に逆転された州です。トランプ候補は、本選でも北米自由貿易協定のカードを切って、民主党からペンシルべニア州とミシガン州を奪還することを狙っています。

3つの主要なルート

 トランプ候補の選挙人270へのルートを探ってみましょう。前回の米大統領選挙でロムニー候補が獲得できた選挙人206をベースに計算すると、以下の3つが、選挙人64を上積みして過半数270に達するための主要なルートです(図表)。

 ・ルート1 オハイオ州(18)+フロリダ州(29)+ペンシルベニア州(20)= 67

 ・ルート2 オハイオ州(18)+フロリダ州(29)+ミシガン州(16)+ニューハンプシャー州(4)=67

 ・ルート3 オハイオ州(18)+フロリダ州(29)+バージニア州(13)+ニューハンプシャー州(4)=64

 第1のルートは、オハイオ州(18)、フロリダ州(29)及びペンシルベニア州(20)の3州です。12年米大統領選挙のロムニー候補の選挙人獲得数206をベースにしますと、これらの州で勝利を収めれば、選挙人67を上積みでき273になります。

 第2のルートは、オハイオ州(18)、フロリダ州(29)、ミシガン州(16)並びに東部ニューハンプシャー州(4)です。ニューハンプシャー州は、共和党予備選挙でトランプ候補が大勝し、民主党予備選挙でクリントン候補が大敗した州です。ミシガン州とニューハンプシャー州の選挙人の合計は20で、ペンシルべニア州と同数になります。従って、トランプ候補は上の4州で勝利を収めれば、ルート1と同様、選挙人獲得数が273になり過半数を超える計算が成り立ちます。

 第3のルートは、オハイオ州(18)、フロリダ州(29)、バージニア州(13)及びニューハンプシャー州(4)です。12年米大統領選挙では、オバマ大統領が選挙人の過半数270を獲得し再選が決定しても、バージニア州は接戦で結果が出ていませんでした。結局、オバマ大統領は同州でロムニー候補を破りましたが、その差は4ポイント以下だったのです。今回の大統領選挙においても、バージニア州は激戦州の中の激戦州になる可能性が高いでしょう。仮にトランプ候補が上の4州を制した場合、12年の選挙人獲得数206に64を上積みして過半数270にギリギリですが到達できます。


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