【五輪現地ルポ】リオデジャネイロはいま

2016年6月29日

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佐々木正明 (ささき・まさあき)

産経新聞リオデジャネイロ支局長

1971年岩手県生まれ。大阪外国語大学(現・大阪大学外国語学部)卒業。産経新聞社に入社、神戸総局、横浜総局、大阪本社社会部等を経て2014年10月までモスクワ支局長。著書に『シー・シェパードの正体』(扶桑社新書)、『恐怖の環境テロリスト』(新潮新書)

 いよいよリオデジャネイロ五輪開催まであと1カ月あまり。開幕を迎える8月5日、オリンピックの聖火が初めて南米大陸に灯ることになる。

 しかし、開催国のブラジルはここ10年でも最悪とされる混迷のさなかにあり、さまざまな問題が社会を襲い、「とても五輪どころではない状況」(地元国会議員)にある。

 コルコバードの丘に立つキリスト像は、「ブラジルの危機」に何を見るか。五輪開催を悩ます5つの懸念材料をまとめた。

警察と「戦争状態」
暗躍する麻薬組織

(1)治安の悪化

 2014年、国連がまとめた報告書によると、世界中で発生する殺人事件のうち1割はブラジルが占めるという。リオデジャネイロの場合、人口の2割が住む貧民街「ファベーラ」を拠点にする麻薬組織が殺人や強盗などを働き、あらゆる犯罪の温床となっている。

 組織の一員はマシンガンやランチャーさえ持っており、警察とは「戦争状態」にある。市内で起こる銃撃戦は日常茶飯事で、警察部隊も命の危険にさらされるため容易に、貧民街には入ることができない。それはファベーラがつまりは、無法地帯であることを意味し、組織はそこで音楽パーティーを開き、麻薬を売って、お金を稼ぐ。

 リオでは今年に入り、犯罪の認知件数が増加している。地元メディアは、警察組織を管轄する地元の州政府が財政破綻状態にあり、治安強化のための予算を割くことができず、麻薬組織の暗躍を許していると指摘している。

 6月19日には、麻薬組織が五輪期間中の指定医療機関になる公立病院を大胆にも襲撃する事件が起こった。

マラソンのスタート・ゴール地点となる施設「サンボドロモ」。麻薬組織に襲撃された基幹病院はこのすぐ近くに位置する

 病院内には1週間前に警察に捕まり、治療を受けていたリーダー格の仲間がいた。麻薬組織の一員はマシンガンなどで武装して、病院内に侵入し、仲間を連れて、逃亡した。

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