2024年4月19日(金)

したたか者の流儀

2016年6月30日

 とはいえ、不幸中の幸いもあるのだ。英国の歴代首相は通貨ユーロを導入してユーロ圏に入るのが夢であった。トニー・ブレアは、自らもフランス語で演説したりして愛嬌を振りまいていたはずだった。政治は面白い。キャメロンの閣僚の中にも離脱派は三人以上いたとされているが、トニー・ブレアの副官であったゴードン・ブラウンも、後に首相の座を引き継ぐが、ユーロ導入は乗り気でなかった。ただ単に、トニー・ブレアが熱心だったからだ。なんせ、オフサイトミーティングの山荘かなにかで、トイレに入ったところドアを壊して雪隠詰めになり、携帯電話で助けを呼んだという話があるくらいだ。

 幸い、ギリシャ危機のお陰で、ユーロ導入の話は消えた。英国ポンド維持はトニー・ブレアを引き継いだゴードン・ブラウンの手柄とされる。嫌なやつの反対の行動をとり、なんもしなかっただけだが、この貢献はきわめて大きい。

一大事であるがどうにかなる

 本当のことを言うと、英国が出て行ってもどうにかなる。一大事ではあるが、アンダー・コントロールだ。そもそも、EUの前のECの前のEECは、音楽家と画家が作ったといわれる。すなわちシューマンと、モネだ。同じ名字の立役者が作ったので、そのように言われることがある。

 仏独伊とベネルクスの集まりがEUの根幹だ。ギリシャやスペインが早くに加入したのは、彼らを監視するためだそうだ。ギリシャもスペインも軍事政権ができる国だ。人前では言わないが、彼らは危ないので仲間に入れて監視しようという腹だったようだ。では、芸術も文化も劣る英国がなぜ入ってしまったのだろうか。そもそも入れるべきではなかったのだ。入ったとしておとなしくしているべきであったのだが。

 フランス外相のシューマンと、第一次大戦で地獄を見てしまったシャンペン屋の親父(モネ)が、これからは地獄の底まで独仏は一心同体で生きてゆく事を誓って作ったのがEUの基本理念だ。もう何百万人何千万人と戦争で死なせたくないというところが出発点だ。独仏が揺らがない限りそれほど心配することはない。フランスではルペンが騒いでいるが、最終的に国民はしたたかだ。馬鹿に見せても、最後はとどまる。そしてドイツはフランスと離れないので。

  
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