WEDGE REPORT

2016年7月2日

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田村明子 (たむら・あきこ)

ジャーナリスト

盛岡市生まれ。1977年米国に単身留学し、1980年から現在までニューヨーク在住。著書に『ニューヨーカーに学ぶ軽く見られない英語』(朝日新書)、『知的な英語、好かれる英語』(生活人新書)、『女を上げる英会話』(青春出版社)、『聞き上手の英会話』(KADOKAWA/中経出版)など。翻訳書も多数。フィギュアスケートライターとしても知られており、『銀盤の軌跡』(新潮社)などの著書もある。

 先日、ご近所に住むジェニファーに久しぶりに顔を合わせた。

 おそらく70代半ばの彼女はこのところリューマチがひどく、歩行補助機が手放せなくなって外出もままならないのだろう。

 開口一番に、私にこう聞いてきた。

 「どう、最近? バレエ見てる?」

 「いやあ、もう見たいダンサーがあまりいなくて。話題と言えばミスティだけど、踊りは相変わらずいただけない。でも彼女をけなしたら、racist(人種差別主義者)と言われるからねえ」

 「あっはっは。内輪ではみんなけなしてるわよ」

 体は弱っても、あっけらかんとした性格は変わっていない。ジェニファーは高らかな笑い声を残してゆっくり去っていった。

メトロポリタン歌劇場で上演された「白鳥の湖」(筆者撮影)

 このジェニファーとは、実はかつてニューヨークタイムズ紙でダンス批評を書いていたジェニファー・ダニングである。

 80年代から90年代にかけて、アナ・キセルゴフと並んでニューヨークのダンス評論家として名を這わせ、バレエ関係者なら知らないものはいなかった。
ダンサーを見守る目は優しく、あまり辛らつなことは書かなかったけれど、視点のはっきりした腕利きのライターだった。

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