ヒットメーカーの舞台裏

2010年1月6日

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池原照雄 (いけはら・てるお)

ジャーナリスト

1950年生まれ。専門紙や全国紙の経済記者として自動車、エネルギー、金融、官庁などを担当。00年からフリーになり幅広い執筆、講演活動を展開。著書に「トヨタVSホンダ」(日刊工業新聞社)、「図解雑学 自動車業界のしくみ」(ナツメ社)など。

 歯周病予防に焦点を当てた電動歯ブラシとして2009年4月に発売した。実勢価格が1900円前後と手ごろなのに加え、軽量でスリムな本体や電動音を抑制した使いやすさが評価されている。半年で計画を1割上回る30万本を販売、低迷傾向にあった電動歯ブラシ市場の活性化にも寄与している。

ライオン 電動歯ブラシ 「デンターシステマ音波アシストブラシ」

 これが電動式かと思わせるほど、本体が細いし軽い。使用中の音も蚊がブーンと耳元に飛んでくる程度の感覚だ。1万円以上する電動製品は、ブラシを歯に当てて強力な振動や回転で汚れを落とす。デンターシステマ音波アシストブラシは普通の歯ブラシのように手動で磨くのが基本。ブラシの振動は、歯垢や歯の汚れ落としを文字通り「アシスト」する。

 毎分9000回転の「音波振動」により、軽いタッチで使えて歯茎へのマッサージ効果も実感できる。社内の試験データでは、歯と歯茎の境目に潜む歯垢の除去力は、手動式の「デンターシステマハブラシ」より2割向上しているという。

 歯周病予防を徹底追求したデンターシステマは、国内歯ブラシ市場ではトップシェア(金額ベース)を誇る。厚生労働省の調査によると、30~60歳代の8割強は歯周病にかかっており、システマの圧倒的な支持の背景ともなっている。システマの特徴は0.02ミリと、通常の歯ブラシの10分の1という極細タイプの毛先にあり、この音波アシストにもブラシ外周部には同一品を使用している。

電動歯ブラシが敬遠されていた理由

 商品企画を担当したのはオーラルケア事業部の大塩繁生(32歳)。「生活に身近な製品づくりをしたい」と00年に入社、6年間にわたって九州地区の営業を担当した後、今の部署に配属となってマーケティングなどに従事してきた。商品企画という点では、既存製品の改良などを手掛けた経験はあったものの、新製品はこれが初めてだった。

 しかも、与えられたテーマは「電動ありき」ではなく、システマの売りである歯垢除去力の向上という間口の広いものだった。さまざまな糸口を探りながら、大塩が着目したのが営業時代に扱ったこともある電動歯ブラシだった。

 市場調査のデータを集めると、国内の電動歯ブラシ市場は廉価タイプが出て話題を呼んだ03年をピークに下降が続いていた。また、使っていた人の3割が離脱していることも分かった。こうした机上のデータに頼るのみでなく、大塩は廉価品から高額品までを買い求め、片っ端から使ってみた。

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