前向きに読み解く経済の裏側

2016年7月4日

»著者プロフィール
閉じる

塚崎公義 (つかさき きみよし)

久留米大学商学部教授

1981年、東京大学法学部卒業後、日本興業銀行(現みずほ銀行)に入行。主に調査関連部署に勤務した後、2005年に銀行を退行して久留米大学へ。著書に『増補改訂 よくわかる日本経済入門』(朝日新書)、『老後破産しないためのお金の教科書』(東洋経済新報社)、『世界でいちばんやさしくて役立つ経済の教科書』(宝島社)、『なんだ、そうなのか! 経済入門』(日本経済新聞出版社)など多数。

 問題は、ドルを買おうという投資家が少ないことです。投資家たちが「リスク・オフ」になっているわけですから、積極的に「米国債は金利が高いからドルを買って米国債に投資しよう」という投資家は少ないのです。そこで、売り注文が買い注文より多くなり、ドルは値下がりしていきました。

 ドルの値下がりが止まるのは、ドルが充分に値下がりして、投資家たちが「今ドルを買えば、大きな利益が見込めるから、リスクは避けたいけれど、こんなチャンスは見逃せない」と考えるようになった時です。

リーマン・ショック時はトリプルパンチだったが……

 リーマン・ショックの時は、投資家たちが極端なリスク・オフになりました。何が起きるか全くわからないので、今回と比べても遥かに明確に、とにかくリスクをとらずに静かにしていよう、という事だったわけです。

 加えて当時は、米国の景気が急激に悪化し、米国の金融が緩和され、米国の金利が下がりました。日本の景気も悪化しましたが、日本の金利はリーマン・ショック前からゼロだったので、日本の金利は下がりませんでした。そうなると、投資家たちにとって、「日本国債を売って米国債を買う」あるいは「ドルを借りる代わりに円を借りて投資をする」ことのメリットが小さくなります。

 投資家にとって重要なのは、日米の金利差なのです。米国の金利が高くても、日本の金利も同じくらい高ければ、わざわざリスクをとって米国債を買ったり日本から円を借りたりする必要は無いからです。

 ドルを持っていることのリスクが変わらないとすると、メリットが小さくなり、しかも投資家たちがリスク・オフになったのですから、ドルにとってはダブルパンチで売られることになったのです。

 さらに、冒頭に記したように、当時は円が文字通りの安全通貨でしたから、「米国や欧州では何か大変な事が起きるかもしれないが、日本は大丈夫だろうから、資産は日本円で持っていよう」と考えた投資家も多かったわけです。

 つまり、当時はトリプルパンチで大幅なドル安円高になったので、今回はシングルパンチですから、前回と同様の幅でドル安円高になることは到底考えられない、というわけです。

  
▲「WEDGE Infinity」の新着記事などをお届けしています。

関連記事

新着記事

»もっと見る