2024年4月25日(木)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2016年7月5日

NYT社説「言葉だけで核兵器のない世界はこない」

 「我々は恐ろしい力に思いを致すために来た」とオバマは訪問の目的を述べた。彼は犠牲者を悼み、核兵器について世界的な「道徳的目覚め」を呼び掛けたが、もし核兵器のない世界への一歩をもたらす具体的な計画を表明していれば、メッセージはより力強いものとなったであろう。

 オバマは謝罪しなかった。戦争の責任は日本にあることを確認した。オバマは「戦争を生んだのは最も素朴な部族の間で紛争の原因となったものと同じ、支配あるいは征服という基本的な本能であった」と述べた。安倍首相は日本も犠牲者であるように屡々歴史を書き換えようとするので、この点は重要である。

 将来については、「広島と長崎が、核戦争の夜明けではなく、道徳的目覚めの始まりとして知られる」将来とし得ると述べた。「恐怖の論理から逃れ、核兵器のない世界を追求する勇気を持たねばならない」とも述べた。

 オバマはロシアとの2010年の新START条約とイランとの核合意を遂げたが、軍縮に反対するロシア、包括的核実験禁止条約の批准に反対する上院、カットオフ条約の交渉を妨害するパキスタンのために、それ以上の前進は阻まれている。オバマ大統領も安倍総理も日本に積み上がっている47トンのプルトニウムの問題には触れなかった。日本による再処理の停止に向けての計画は歴史的訪問にふさわしい成果であり得たであろう。米国の空中発射核クルーズミサイル計画の破棄など他にも可能なイニシアチブがある。言葉だけでは核兵器のない世界はやって来ない。

出典:‘Turning Words Into a Nuclear-Free Reality’(New York Times, May 27, 2016)
http://www.nytimes.com/2016/05/28/opinion/turning-words-into-a-nuclear-free-reality.html?partner=rssnyt&emc=rss&_r=0

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