オトナの教養 週末の一冊

2016年11月5日

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足立倫行 (あだち・のりゆき)

ノンフィクションライター

早大政経学部中退後、週刊誌記者などを経てノンフィクション作家に。近著に『血脈の日本古代史』(ベスト新書)『倭人伝、古事記の正体』(朝日新書)。

「観察する男 映画を一本撮るときに、監督が考えること 」
(想田和弘/著、ミシマ社/編 ミシマ社)

 事前のリサーチや予定表はない。気になった対象を1人で撮影し録音し「観察」する。編集には時間をかけるが、ナレーションも音楽も入れない。そんなドキュメンタリー映画を想田さんは「観察映画」と名付けた。

 その第6弾が、岡山県瀬戸内市の牛窓(うしまど・妻の母の故郷)を舞台とした、現在上映中の「牡蠣工場(かきこうば)」(2015年、145分)である。

 本書は、「牡蠣工場」の撮影前のインタビューから2年半後のロカルノ国際映画祭上映まで、監督・想田さんを追った逆観察記だ。

 「本書に、点を掘り下げると普遍性が見えてくる、という一文がありますが、今回の映画では、海辺の小さな牡蠣工場を観察したら、過疎、高齢化、後継者難、人手不足、中国人労働者、震災被災者とのつながりなど、グローバルな問題が見えてきた、と?」

 「はい。そうですけど、TVドキュメンタリーではないので、問題提起ではありません。まず、顔の見える存在としての登場人物がいて、彼らの日々の営みがあり、そこに時代の変化が急速に浸透してくる。私は、この作品は〝変化についての映画〟だと思います」

 想田さんは誰の物語にもスリルがあると言う。共有できるスリルは他人事ではなくなり、そこをキチッと描けば「映画になる」。つまり想田式「観察映画」は、ドキュメンタリーの新たな領域開拓を目指すのだ。

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