オトナの教養 週末の一冊

2016年11月5日

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足立倫行 (あだち・のりゆき)

ノンフィクションライター

早大政経学部中退後、週刊誌記者などを経てノンフィクション作家に。近著に『血脈の日本古代史』(ベスト新書)『倭人伝、古事記の正体』(朝日新書)。

想田和弘(Kazuhiro Soda) 映画作家。1970年栃木県生まれ。東京大学文学部卒。93年からニューヨーク在住。監督作品に「選挙」「精神」「Peace」等があり、国際映画祭などで受賞多数。

 「そういえば、今回もネコが登場しますね。自民党の落下傘候補を撮った『選挙』や、地方の精神科診療所に集(つど)う人々を描いた『精神』にも出ていました。想田ワールドの映画作品には、ネコが必須アイテム?」

 「夫婦ともネコ好きです。全作品に登場しますから私の映画の印鑑(はんこ)のようなもの。ネコは姿態や行動が独特で、いろんな意味を持たせやすい。メタファーが容易というか」

 「隠喩(いんゆ・メタファー)ですか?」

 「ええ。本作では、何度追い払ってもネコが家の中に入ろうとする場面がありますが、あのネコの行動は、日本に居場所を求める中国人労働者のように私には思えます」

 そこは気付かなかった。「観察映画」には意外に作り手の個性が出るのだ。

 「1993年からずっとニューヨーク在住ですね。なぜですか? 世界を相手にした映画作りができるから?」

 「たまたま映像の仕事があったので居続けただけですが、視点の広さというか、ニューヨーク的価値観の影響は確かに受けています」

 マンション住まいの想田さん夫妻は、2人で制作会社〈Laboratory X〉を運営し、自宅を事務所兼編集室として使っている。

 「現在はどんな作業を?」

 「『牡蠣工場』と同時期に撮った86歳の老漁師の映画の編集です」

 「そして部屋にはネコがいる?」

 「私、実はネコ・アレルギーなんです。毛に触ると目が腫れるから撮るだけ、飼いません」(笑)

 作品も私生活も、大変にユニークだ。

  
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