海野素央のアイ・ラブ・USA

2016年7月6日

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海野素央 (うんの・もとお)

明治大学教授、心理学博士

明治大学政治経済学部教授。心理学博士。アメリカン大学(ワシントンDC)異文化マネジメント客員研究員(08~10年、12~13年)。専門は異文化間コミュニケーション論、異文化マネジメント論。08年及び12年の米大統領選挙においてオバマ陣営にボランティアの草の根運動員として参加。16年米大統領選挙ではクリントン陣営に入る。著書に「オバマ再選の内幕―オバマ陣営を支えた日本人が語る選挙戦略」(同友館)など多数。

非従来型VS.従来型選挙運動

 トランプ陣営の非従来型選挙運動について説明します。まず、従来型の選挙運動では、候補者はテレビ広告といった空中戦に多額の選挙資金を投入します。ところが、トランプ候補はタダでテレビやラジオ番組に出演し、そこで時間をかけて自身が設定した「国境の壁」やイスラム教徒の米入国全面禁止などのアジェンダ(議題)を正当化する戦略をとりました。その結果、テレビ広告費用のコスト削減が可能になったのです。

反トランプの看板(筆者撮影@ワシントン)

 次に、トランプ候補は他の候補者よりもグッズに選挙資金を投入し、ブランド化を図ったのです。2015年、トランプ陣営は野球帽、Tシャツ及びバッジなどに約100万ドル(約1億270万円)を投入しました。これも経営者のアイデアであり、非従来型の選挙運動の1つです。

 トランプ候補は、陣営のスローガンである「アメリカを再び偉大な国に取り戻す」が刺繍された野球帽を自ら被って集会に登場します。ある集会では、用意してあった野球帽を舞台から支持者に向かって投げ、彼らを活気づけたのです。グッズに投資をする選挙戦略は的中し、今やトランプ支持者は陣営の野球帽にアイデンティティを持っています。戸別訪問の際、筆者はクリントン陣営の帽子を被っていますが、選対の中や集会でクリントン陣営の運動員や支持者が被っているのを殆ど見かけません。勿論、クリントン候補も陣営の野球帽を被っていません。

 さらに、トランプ陣営は世論調査員を採用しませんでした。従来型の選挙運動では、各陣営は世論調査員を雇い、メディアとは別に独自のデータ収集を行います。世論調査員は、特定の有権者を集めてグループで自由に意見を出してもらい情報を収集するフォーカスグループを使い、候補者が発信するメッセージを彼らがどのように受け止めるかのテストなどを行います。トランプ候補は、メディアが世論調査を実施してくれるのだから、陣営には世論調査員は必要ないと主張しているのです。これらに加えて、同候補の政治的考慮をしない予想不可能な言動並びにプロンプターを使用しない演説も非従来型の選挙運動と言えるでしょう。

クリントン候補とトランプ候補のパンフレット(筆者撮影@カリフォルニア州サンフランシスコ)

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