オトナの教養 週末の一冊

2016年7月7日

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中村宏之 (なかむら・ひろゆき)

読売新聞東京本社調査研究本部 主任研究員

1967年生まれ。91年、慶應義塾大学経済学部卒、読売新聞東京本社入社。福島支局、立川支局、経済部、政治部、ロンドン特派員、米ハーバード大学国際問題研究所研究員、経済部デスクを経て2014年より現職。著書に『世界を切り拓くビジネス・ローヤー』『御社の寿命』、(いずれも中央公論新社)など

 「日本の話を聞きたいと言いつつ、あなたにも外国の情報機関のような人が接触してくるかもしれませんよ」

 海外駐在や留学に出る前に、ある人からこう言われた言葉が鮮明に記憶に残っている。「そんなことが本当にあるのなあ」とも思ったが、実際には自分のような者にはそうしたことは全くなかった。だが、本書を読むとメディアの関係者などもそういう対象になりうるということがわかる。

必要だが、創設はそう簡単ではない

 日本における情報機関の必要性は長年指摘されてきたが、なかなかできていないのが実情だ。先日もバングラデシュの首都ダッカで7人の日本人が命を落とす痛ましいテロ事件があったばかりだが、世界各地に日本人がいて、テロ事件などに遭遇する危険が常にある中で、高度な情報収集能力の有無が国民の生命や財産をはじめとする多くの国益を決定的に左右する。テロに限らず、安全保障、内政、財政、金融、企業活動なども含めて情報の大切さは論を待たない。秘密情報を狙う他国の動きが活発になる中、我が国としても情報収集に出遅れることはあってはならないのである。

 著者も指摘しているが、各地で頻発するテロ事件が示すように、暴力の行使という恐怖で一定の政治的要求を満たそうとすることが目的であるテロ行為は、話し合いでの解決などは有り得ない。故に、情報をもって対抗し、未然防止を図るしかない。

 情報機関というととかく「007」のようなスパイ映画を連想しがちだが、本書を読むと、実はもっと地味で、目立たないが、勝負するときにはしっかり勝負する存在であることがわかる。

 <日本以外の主要国はすべて備えている。我が国も早急にこの組織を作るべきなのである>というのが本書全体を貫く考え方だが、同時に、〈情報機関の創設と一口にいっても、そんななまなかな話ではない〉と難しさを指摘する。

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