世界の記述

2016年7月25日

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大西康雄 (おおにし・やすお)

日本貿易振興機構(ジェトロ)アジア経済研究所・上席主任調査研究員

1977年早稲田大学政治経済学部卒、アジア経済研究所入所。駐中国日本大使館専門調査員、中国社会科学院工業経済研究所客員研究員、アジア経済研究所地域研究センター長、JETRO上海センター所長などを経て現職。

コスト増に耐えきれず零細業者の倒産多発

 越境EC輸入は、ネットで注文を受けたあと、海外からのEMS(国際スピード郵便)発送や指定都市内の保税倉庫からの発送で注文主に届く仕組みである。個人輸入扱いであるために事前の身分証明書登録が必要で年間輸入額は2万元以下、という制限はあるものの、毎回税額50元未満は免税。所要日数も保税倉庫から発送するケースで5~7日と短かった。

 新政策では、個人の1回の輸入限度額2000元(年間限度額は不変)、2000元超の輸入には国内付加価値税が課税(税率は0.7掛け)され、所要日数も大幅に伸びるなどメリットはすべて失われる。越境EC業者にとって痛手なのは、輸入許可証取得の手続きに相応の費用とおおむね1年という時間を要することだ。香港など簡便な手続きで輸入可能な地域に商品倉庫を持てばこうしたリスクを回避することは可能だが、大部分の零細業者はこうしたコスト増に耐えられず、倒産が多発した。

 苦境に立つ越境EC業界や、貿易額の急減に見舞われたテスト都市(現在は10都市)からの陳情を受けて、税関総署は5月に新政策の実施を来年5月11日まで延期すると発表した。

 ただし、あくまでも延期という暫定措置であり、業界も関係地方政府もそれまでに上記「商品リスト」の再検討や通関手続き、納税の具体的手順を定める必要がある。ただし、視点を変えれば、こうしたプロセスを通じて、従来はグレーだった越境ECビジネス全体の法的地位が確定することにもなる。残された時間の中で新しいビジネスモデルを確立することが出来るのか、政府当局と企業の力量が試されることになる。

  
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