前向きに読み解く経済の裏側

2016年10月3日

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塚崎公義 (つかさき きみよし)

久留米大学商学部教授

1981年、東京大学法学部卒業後、日本興業銀行(現みずほ銀行)に入行。主に調査関連部署に勤務した後、2005年に銀行を退行して久留米大学へ。著書に『増補改訂 よくわかる日本経済入門』(朝日新書)、『老後破産しないためのお金の教科書』(東洋経済新報社)、『世界でいちばんやさしくて役立つ経済の教科書』(宝島社)、『なんだ、そうなのか! 経済入門』(日本経済新聞出版社)など多数。

赤字操業すべきか否かはサンクコストの問題?

 「サンクコスト」という考え方があります。既に払ってしまった金は戻らないのだから、その事は忘れて未来志向で一番ベストな選択をしよう、という考え方です。本シリーズで、ビュッフェ店に入ったらマズかった場合、支払った代金の異は忘れて店を出て、自宅でお茶漬けを食べよう、と記しましたが、それがサンクコストの考え方です。じつは、赤字操業すべきか否かも、その考え方の応用なのです。

 固定費というのは、売上高と関係ない費用です。つまり、払ってしまった店舗購入費用、雇用契約を交わしてしまった正社員の給料など、「戻ってこない金」なのです。戻ってこない金のことは忘れて、未来志向で最良の選択をしようと思えば、「材料費より1円でも高いなら受注しよう」という選択になるわけです。もちろん、店舗を購入し、正社員を雇った判断が結果として間違っていたわけですが、今更それを言っても何もならない(死んだ子の歳を数えても始まらない)というわけですね。

固定費の大きな企業は収益の振れ幅が大きくなる

 企業の決算発表を見ると、売上げが10%以上増減することは希ですが、利益が10%以上増減することは珍しくありません。そのからくりも、固定費と変動費にあるのです。

 今、固定費8万円の理髪店があるとします。客単価は1万円、来店客が10人だとします。理髪店は、変動費はゼロだと考えて良いでしょうから、売上げが10万円、費用が8万円で利益は2万円となります。

 来店客数が11人となり、売上高が11万円に増えたとします。費用は8万円のままですから、利益は3万円となります。売上高が1割増える間に利益は5割増えるわけです。もっとも、良い事ばかりではありません。売上げが10万円から9万円に一割減ると、利益は2万円から1万円に半減してしまうのです。

 ちなみに、来店客8人で利益ゼロの売上高を、損益分岐点と呼びます。これを下回ると赤字に転落する、という境目の売上高です。損益分岐点の会社の売上げが僅かでも増えると利益が僅かに発生しますから、増益率は無限大になります。あまり意味のある数字ではありませんが。

  
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