2024年4月18日(木)

ACADEMIC ANIMAL 知的探求者たち

2010年1月14日

 ぼくは生きているものを見たいんですよ。昔好きだった昆虫採集といっしょで。でも、そういうことが研究の第一歩になる大切なことなんです。

●少年時代はどんな虫が好きだったんでしょう?

——甲虫のちっちゃなやつで、ハムシとか。子供が憧れるのはチョウチョとかカブトムシの類いですよね。昆虫採集好きな子だとオサムシとか、少しマニアックな子でカミキリムシだと思うんですけどね。うちは山あり谷ありというような場所ではなかったので、そんなに珍しい虫なんていないんですよ。ハムシとかゴミムシダマシとか、図鑑にあんまり載ってないような地味な虫をよく採りました。

インタビューに答える鈴木氏。手にしているのは、クマムシの革細工。

●昔の少年は昆虫採集セットをみんな持っていましたよね。注射して殺したり標本にするための防腐液が入っていたやつ。

——ぼくは使わなかったな。必要を感じなかったから。たとえばカブトムシが死んだら放っておけば乾燥するわけで。つかまえた虫を標本にしたいわけじゃなくて、生きたまま飼うのが好きだったので、わざわざ注射したり殺虫缶に入れて殺すなんてことはしなかったね。それがおもしろいとは思わなかった。
 

●少年時代は活動的でした? それとも静かなタイプ?

——中学校までは活動的だったかな。サッカー部でしたが、高校からはがらっと変わって、本ばかり読んでいました。小説とかいろいろ。そう。中学の最後の春休みに、『ムツゴロウの博物誌』という本を読んだんです。もともとドクトルマンボウシリーズが好きで、ムツゴロウさんが北杜夫に憧れていたと知って、読んだのかな。あと、その頃、近所の塾にときどき通ってましてね。受験塾ではない、昔の寺子屋みたいな塾。そこの先生が教えてくれた本をまとめて読んだ中にあったんだと思います。

●生物の道に入ったのはムツゴロウさんの影響が大きいんですね。

——それはかなりあります。ただ、その前にファーブルもあるかな。小学2年ぐらいの時に、ポプラ社の子供向け伝記シリーズのファーブルの巻を、ガリレオの巻といっしょに持ってたんです。たくさん本を買ってもらえるわけじゃないから、何度も繰り返し読みましたね。それで、自然に親しむっていいな、とは思っていました。

●伝記本なんて学校の図書館で借りればすむと思うんですけど、買ったんですか?

——親に買ってもらいました。ガリレオも読んだけど、ファーブルのほうが響いたんだね。自然に親しむといっても、ぼくの場合は物理とか数学じゃなくて生き物のほうだった。ファーブルってじつは物理や数学もやっていたんだけどね。


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