田部康喜のTV読本

2016年7月16日

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田部康喜 (たべ・こうき)

東日本国際大学客員教授

福島県会津若松市生まれ。幼少時代から大学卒業まで、仙台市で暮らす。朝日新聞記者、朝日ジャーナル編集部員、論説委員などを経て、ソフトバンク広報室長に就任。社内ベンチャーで電子配信会社を設立、取締役会長。2012年春に独立、シンクタンク代表。2015年10月から東日本国際大学客員教授として地域振興政策を研究、同大・地域振興戦略研究所副所長を兼務。

 「私をおいて消えるのは止めてよ、いじわる。ねぇ、どこに行ったの? 遠くに行かないで。苦しい、さみしい。止めて、待って。また会えるよね。やだ、こわい、戻ってきて!」

 日本テレビ「時をかける少女(土曜日・夜9時)の第1回は、主人公の高校3年生・芳山未羽(黒島結菜)の語りが進み、物語の背景と登場人物たちが紹介されていく。

 「戻ってきて!」と悲痛な声をあげる。物語の結末を暗示している。

甘く切なく少女の内面描く

 「時をかける少女」の原作は、筒井康隆の同名の短編である。刊行から50年が経つ。幾度となく映画、テレビ、アニメーションによって、映像化されている。40歳、50歳代であれば、原田知世主演の映画(大林宣彦監督、1983年)、若い世代であれば主役の声が仲里依紗のアニメ(細田守監督、2006年)が記憶に強く残っているのではないか。

 高校の理科実験室で、ラベンダーの甘い香りをかいだ少女が、タイム・リープ(時間跳躍)とテレポーテーション(身体移動)の能力を持ってしまう。それは、未来からきた少年がもといた時点に戻るために作ろうとしていた薬品だった。少女は少年に魅かれ、その思いが果たされないままに、少年は未来に去っていく。

 原作は、物語の場所も時代も記すことなく、青春ドラマの傑作を生む甘く切ない少女の内面を描いている。そのことがかえって、映像作家たちの想像力を刺激して、さまざまな作品を生んできたのだろう。それらは「時かけ」とも呼ばれる。

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