WEDGE REPORT

2016年7月17日

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部屋数1万の大統領宮殿、スルタンに擬えられる

 大統領はこうした功績を背景に軍の上層部を掌握し、もはやクーデターが相次いだ過去は終わったかに見えた。しかし、軍を固めたことに安心したこともあり、大統領の権力への野望は高まる一方。首相から大統領に転身すると、今度は名誉職的な大統領を実権の伴う国家元首にするべく憲法改正に向けて走り出した。

 大統領は自分の意に沿わない首相を解任し、反対派勢力や批判的なジャーナリスト、メディアも次々に弾圧。こうした独裁的な姿はかつてのオスマン帝国の専制君主“スルタン”に擬えられている。新しく建てた大統領宮殿は部屋数が1万室もある豪奢なものである。

 この一方で、イスラム主義者としての顔も次第に見せ始め、女性公務員にイスラムの象徴であるスカーフ着用を解禁するなどイスラム色の濃い政策を推進した。スンニ派的愛国主義を共有するエジプトのイスラム主義者「ムスリム同胞団」を支援。クーデターでモルシ前政権を打倒したシシ・エジプト大統領を非難し、エジプトから逃走したイスラム過激派をかくまった。

 国是である政教分離に反するようなエルドアン大統領のイスラム化政策に対し、軍が介入するのではないかとの憶測も根強く流れた。このため参謀本部は今年3月、わざわざ声明まで発表してこれを打ち消した。しかし昨年には、トルコの専門家の1人が「中堅将校によるクーデター」の可能性を指摘するなど不穏な動きを懸念する声が出ていた。

 ベイルート筋は「今回のクーデター未遂の背景には、エルドアンの慢心と油断があるのは明らか。彼には権力を完全に掌握したという思い上がりがあった。軍の内部の動きにもっと注意すべきだった」と指摘している。

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