WEDGE REPORT

2016年7月17日

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深刻なジレンマ

 今回のクーデターの動きを察知できなかったのは米欧も同じだ。ワシントン・ポスト紙によると、最新の米国の公電や情報機関の報告でも、エルドアン大統領は軍上層部から十分支持されており、クーデターなどの企てを事前に阻止できるとの内容だった、という。

 米欧は大統領が一段と独裁的になりつつあることを憂慮しながらも、それが逆にテロとの戦いや難民危機でトルコへの依存を強めることにつながった。しかし、同時に今回のクーデター未遂は米欧に深刻なジレンマを突き付けることにもなった。「非民主的なクーデターを支持するのか、非民主的な指導者を支持するのか、ということだ」(ハース外交問題評議会理事長)。

 エルドアン大統領が今後、今回の事件の犯人捜しと軍の粛清を進めるのは必至だ。そうなれば、国内がさらに混乱し、欧州連合(EU)との間で合意した難民の強制送還の取り決めや、シリア内戦の解決、過激派組織「イスラム国」(IS)とのテロとの戦いに大きな支障が出ることになるだろう。

 特に海外テロ作戦を激化させているISはトルコの混乱に乗じて、さらにテロを続発させる懸念も強い。トルコが軍部を立て直し、国家の安定と米欧の信頼を取り戻すことができるのか。「軍が牙を向くことを知った」(ベイルート筋)エルドアン大統領の前途は多難だ。

  
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