今月の旅指南

2010年1月29日

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辻 一子 (つじ・いちこ)

岡山県生まれ。フリーライター。旅行会社のPR誌の編集者を経て、1998年からフリーランスに。旅の雑誌を中心に活躍。

 霊峰白山の西北に位置する石川県白山市の東二口〔ひがしふたくち〕集落。冬ともなれば2メートルもの雪に埋もれる山間の村に、300年以上前から伝わるのが「文弥〔ぶんや〕人形浄瑠璃」だ。

「酒呑童子」の見せ場に、観客が引き込まれていく

 「文弥」とは、17世紀後期に大坂で活躍していた浄瑠璃太夫「岡本文弥」のこと。“文弥の泣き節”といわれた哀愁に満ちた語り口で人気があったという。東二口の人形浄瑠璃は、学問のために大坂へ上ったこの集落の若者が、当時、全盛の最中にあった人形浄瑠璃に魅せられ、習い覚えて、村に持ち帰ったのが始まりとされる。以来、村では演じる者も観る者もみな人形浄瑠璃に夢中になり、農閑期の娯楽、また旧正月を祝う催し物として親しんできた。

 人形1体につき3人遣いで演じられる文楽と違い、東二口人形浄瑠璃は「でく」(人形)1体を遣い手が1人で操る。これは古い形式を受け継ぐ人形浄瑠璃として、とても貴重なものだとか。上演される演目は、江戸時代の最盛期には40以上あったというが、現在は「源氏烏帽子折〔げんじえぼしおり〕」「門出屋嶋〔かどでやしま〕」「出世景清〔しゅっせかげきよ〕」「大職冠〔たいしょくかん〕」「嫗山姥〔こもちやまんば〕」「酒呑童子〔しゅてんどうじ〕」の6演目。

 世界無形文化遺産「文楽」の卓越した芸と比較すると素朴で単調ながら、「でく」の力演と浄瑠璃の情感溢れる語りが一体となった舞台は、観る者の心を揺さぶる。
 

 
 
 
 

東二口文弥まつり
石川県白山市・東二口歴史民俗資料館(北陸本線金沢駅からバス)
〈問〉白山市観光課 076(274)9544
http://www.gogo8934.jp/contents/see/history.html

◆「ひととき」2010年2月号より


 

 


 

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