前向きに読み解く経済の裏側

2016年8月1日

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塚崎公義 (つかさき きみよし)

久留米大学商学部教授

1981年、東京大学法学部卒業後、日本興業銀行(現みずほ銀行)に入行。主に調査関連部署に勤務した後、2005年に銀行を退行して久留米大学へ。著書に『増補改訂 よくわかる日本経済入門』(朝日新書)、『老後破産しないためのお金の教科書』(東洋経済新報社)、『世界でいちばんやさしくて役立つ経済の教科書』(宝島社)、『なんだ、そうなのか! 経済入門』(日本経済新聞出版社)など多数。

 また、筆者のように本当に景気を心配して増税に反対していた人も多かったと思います。そして実際、増税によって景気が悪化し、景気対策が必要となって財政がむしろ悪化したように見えたケースもあったわけです。

 しかし、今後は労働力不足の時代ですから、増税して景気が悪くなっても失業者が増えることは無いでしょう。一時的に失業した人も、比較的容易に次の仕事を見つけることができるはずですから、問題は深刻化しないでしょう。

増税がインフレ対策と財政再建の一石二鳥に

 少子高齢化で労働力不足が深刻化していくと、インフレの時代が来ます。恒常的に労働力が足りないので、物が不足して価格が上がっていくのです。労働力不足による賃金の上昇も、コストプッシュ・インフレをもたらすでしょう。

 通常は、インフレ抑制は金融引き締めの仕事ですが、昨今の日本のように政府が巨額の借金を抱えている場合、金融引き締めで金利が上がると財政部門の金利負担が巨額になってしまうので、好ましくありません。従って、ポリシーミックスとして金融を緩和したまま増税で景気を抑制してインフレを抑え込もうということになりそうです。

 現在、インフレ抑制に財政政策(増税等)が使われていないのは、増税はタイムラグが長いからです。たとえば消費税の場合、法案を作成して国会で審議して、法律が成立してから準備期間を置いて、ようやく増税されるわけですが、その間に景気が悪化して、増税が実施される頃にはインフレが納まっている可能性も高いのです。

 しかし今後は、恒常的なインフレ圧力に悩むことになりますから、増税で対応することが適切でしょう。増税に多少時間がかかっても、その間にインフレ圧力が消えることはなさそうですし、高い税率で恒常的に景気を抑制し続けることが必要になってくるからです。

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