世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2016年7月28日

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 多額の武器輸出を含むアジアとの絆を考えれば、欧州は、アジアの安全保障により大きな役割を果たしてよいはずだが、欧州がその気になるのかはわからないと、6月18-24日号の英エコノミスト誌が論じています。要旨は以下の通りです。

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フランス国防相の空疎な提案

 欧州自身は時に自らの軍事プレゼンスを認めてもらいたい素振りを見せる。6月初めのシャングリラ対話では、仏国防相が、南シナ海における軍事プレゼンス維持に向けて欧州諸国が調整、協力することを提案した。が、多くの関係者は、空疎な提案としてこれを退けている。

 一方、欧州をとりわけ冷ややかに見ているのはASEANだ。両者は東ティモールや軍事政権下のミャンマーをめぐって長年揉めてきた。また、欧州の植民地だったASEAN諸国は、人権を問題にする欧州を偽善的と見ており、衰退しつつある欧州の絶望的状況を欧州自身がよく理解していないらしいことにも苛立っている。この見方は、EUが経済危機、移民問題、イギリスの離脱問題等、EU内の問題に振り回される中でいっそう強固になってきた。

 地域の安全保障問題の重要な討議の場となってきた、東アジアサミットや拡大ASEAN国防相会議にEUが入っていないこともマイナスに働く。欧州はアジアの安全保障への関与不十分で加盟できず、加盟しなければ議論に加われない、というジレンマにある。

 EUは一つにまとまれない、というアジア側のもう一つの不満もある。イギリスは「中国の親友」になろうと、ラオスやカンボジアがASEAN内で時々やるように、中国の指示でEUのコンセンサスを妨害しかねない。勿論、中国はEUが米国の対中政策に同調しないよう、中国の提供する商業的利益をめぐるEU諸国間の競争に付け込み、EU全体を誘惑しようとするだろう。

 しかし、これらは、EUを東アジアサミットや拡大ASEAN外相会議に参加させない理由にはならない。南シナ海の問題は、単に米中競争の問題ではなく、ルールに基づく国際秩序の将来にかかっている。自分達の問題で混乱している欧州は、欧州がアジアを必要としているように、アジアも欧州を必要としていることを認識すべきだろう。

出 典:Economist ‘The lost continent’ (June 18-24, 2016)
http://www.economist.com/news/asia/21700666-europes-frustrating-search-strategic-relevance-asia-lost-continent

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