世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2016年8月4日

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 社説は、ファルージャの奪還はISとの戦いで最も重要な勝利の一つだが、イラク内での諸グループ間、特にスンニ派とシーア派が対立している限り、ISの脅威除去は難しいだろうと述べています。そういう面もありますが、ファルージャ奪還の重要性は、やはり過小評価されるべきではありません。

 ファルージャはISにとって象徴的に重要な都市でした。ファルージャは2014年1月、ISが初めて実効支配したイラクの主要都市でした。ISはファルージャの実効支配ののち、同年6月にイスラム国家の樹立を宣言しています。従ってファルージャの喪失はISの「領域国家」樹立の基本にかかわるものです。

ファルージャの喪失

 ISにとって象徴的な重要性を持っていたファルージャの喪失は、カリフ国家を名乗り、自ら正統イスラムをもって任じてきたISの権威に致命的打撃を加えるものであり、イスラム過激分子へのISのアピールを著しく減じるものです。

 ISはいまだ人口100万のイラク第二の都市モスルを支配し、「首都」と称してシリアのラッカも支配しています。この2つの都市を奪還して初めてISはもはや「領域国家」ではなくなったといえるでしょう。しかし、ファルージャの奪還は「領域国家」としてのISの解体の第一歩であると考えてよいでしょう。

 もちろんISがシリア・イラクの一部を支配する「領域国家」でなくなっても、ISの脅威がなくなるわけではありません。ISはそのような場合に備えてリビアに拠点を築いており、またパリ、イスタンブールなどで見られたようなテロ活動は一層強化するでしょう。イラクについても、たとえモスルを奪還したとしても、ISの勢力は直ちには消失しないでしょう。ISが「領域国家」でなくなった後も、ISとの戦いは長期にわたることを覚悟しなければなりません。
 

  
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