あの負けがあってこそ

2016年8月11日

»著者プロフィール

 ギラギラと輝く太陽と潮風が彩る夏の海。海水浴客でにぎわう浜辺に同化する赤と黄色のユニフォームを着たライフセーバーたち。彼らは自己主張することもなく、人の良いお兄さん、お姉さんといった雰囲気で浜のパトロールにあたっているが、見た目ほど楽なものじゃないと書いておきたい。

 それぞれが目指すものはただひとつ「水辺の事故ゼロ」の夏である。その言葉の意味がどれほど重いものかは夏場以外の10カ月間の過ごし方に表れている。

全日本種目別選手権ファイナルレースに出場する植木将人さん(写真左、提供:日本ライフセービング協会)

 夏真っ盛りの今、そんなライフセーバーの一人であり、レスキューアスリートとして世界のトップに挑み続ける植木将人(うえきまさと)の「あの負け」の物語をご紹介したい。

世界の頂点、掴んだその手から消えた瞬間

 ドイツ・ヴァーネミュンデで行われた「ライフセービング世界選手権大会Rescue2008」。植木は初めて出場した世界選手権のビーチフラッグス競技で、世界一を決する最後のレースに臨んだ。

 落ち着いていた。気負いもなく、いつもと何ら変わることなく世界の大舞台へと挑めた。植木は自身の強みはどんな時でも平常心でいられることだと思っている。このレースに勝てば世界一という、その場になっても、なお平静と変わらない精神状態で臨むことができた。

関連記事

  • PR
  • 新着記事

    »もっと見る