あの負けがあってこそ

2016年8月11日

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 それから2年。植木は再び16年世界大会の日本代表を決する選考レースに出場した。

 「日本代表を外れて引退する道もありました。でも、それを選ばなかったのは08年の世界大会のことが根底にあったからなんです。最初は日本代表に貢献しようという思いでやってきたけれど、年齢のこととか、時代の流れには左右されない。周りの空気も関係ない。僕には世界一に挑戦するという目標があって、レスキューのNO.1を求め続けなければならないんです。それが僕を駆り立てる原動力になっているので、もう一度、力の限り戦って世界一に挑戦しようと思ったのです。なぜならば、夏の現場に立つ以上は怠れない努力だと気づいたからです」

年齢に抗い再び世界の舞台へ

 レースの一本一本が真剣勝負だ。決勝に残った誰もが日本代表の座を狙っている。勝ち上がってくる選手たちは「俺は勝つためにやってきたんだ」という表情を見せていた。キャリアの長い植木には、その感情の高ぶりや気負いが手に取るように伝わってきた。

 「彼らも勝ちたいと思っている。でも、僕も勝ちたいと思っている。僕と周りの違うところは、冷静さだと思うんです。相手を意識して彼を倒すとか、フラッグを取るとか、勝つとか、優勝するとか、そういったところに意識が向くと精神的に波が出来てしまうんです。それよりも冷静になって、自分自身にだけ意識を向ける方が高いパフォーマンスを発揮できるんです。

 学生時代から勝ったり、負けたりを重ねながら、経験上身に着いたものなのでしょうね」

 植木は16年全日本種目別選手権のビーチフラッグスで優勝を果たし、この秋オランダで行われる「ライフセービング世界選手権大会Lifesaving World Chanpiomships2016」の日本代表に選出された。年齢という波に抗い、再び世界への挑戦権を獲得したのである。

 「オランダではビーチフラッグスとビーチスプリント、ビーチリレー、オーシャンマンリレーのランナーとして出場し、日本代表チームとして総合6位を目指します。僕個人としては、世界一への挑戦です。そのために今年のオランダがあると思っています」

 そう言って静かに笑った。

 植木は教員として横浜市にある聖坂養護学校で教壇に立つ傍ら、夏場の休日は片瀬西浜海岸・東浜海岸の安全を守るライフセーバーとしてボランティアに勤しんでいる。今年も「水辺の事故ゼロ」の夏を目指して。


<植木将人の主な戦績>
全日本ライフセービング選手権:優勝8回 (02,04,06,07,09,10,11,13) /準優勝 (14)
全日本ライフセービング種目別選手権:優勝6回 (06,07,10,11,15,16) / 準優勝4回(08,09,12,13)

国際大会

<2007 年>
全豪選手権3位
三洋物産インターナショナルライフセービングカップ 2007優勝
インターナショナルサーフレスキューチャレンジDAY1優勝 DAY2 優勝 DAY3 4位
オーストラリア・インターステイツ選手権(豪州代表選手権)優勝

<2008 年>
ライフセービング世界選手権 Rescue2008(ドイツ・ヴァーネミュンデ)準優勝

<2010 年>
全豪選手権 6位
三洋物産インターナショナルライフセービングカップ 2010優勝
ライフセービング世界選手権 Rescue2010準優勝

<2012 年>
全豪選手権 準決勝
三洋物産インターナショナルライフセービングカップ 2012 3位
ライフセービング世界選手権 Rescue2012 4位

<2015 年>
三洋物産インターナショナルライフセービングカップ 2015 DAY1 準優勝 DAY2 優勝

<2016 年>
全豪選手権8位
三洋物産ライフセービングカップ 2016 DAY1準優勝 DAY2 優勝
ライフセービング世界大会 Lifesaving World Chanpiomships2016(オランダ)日本代表選出

  
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