2024年4月26日(金)

Wedge REPORT

2016年8月4日

最大だった投票率の上昇幅

 次に、過去の選挙における投票率の変化幅を見ると、これまで20回の都知事選が行われ、前回選挙より投票率が上昇したのは9回、逆に前回選挙より低下したのは10回となっている。今回の選挙を除いてこれまで上昇幅が最も大きかったのは第4回目(1959年4月23日挙行)選挙の10.5%ポイントであり、今回の上昇幅はそれを上回っており、都知事選史上最大の上昇幅を記録したことがわかる(図8)。ちなみに、これまで最も大きな下落幅を記録したのは、2014年2月9日に執行された第19回目の選挙で前回選挙からの下落幅は▲16.5%ポイントであり、先述の通り、前日に降った大雪の影響が大きい。

図8 投票率の変化幅の推移
(出典)東京都選挙管理委員会資料をもとに筆者試算
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投票率上昇の背景

 投票率は、RikerとOrdeshookの理論にしたがえば、(1)政党もしくは候補者間の差が大きければ投票への参加可能性は高くなる、(2)有権者が自分の一票の価値を重く見るほど投票への参加可能性は高くなる、(3)有権者の義務感が強いほど投票への参加可能性は高くなる、(4)投票のコストが高いほど投票への参加可能性は低くなる、(5)それぞれの項目の絶対的水準が低いほど投票への参加可能性は低くなる、ことが知られている。

 それぞれを今回の選挙に当てはめて考えると、(1)主要な候補者間では争点の違いがそれほど感じられなかった、(2)投票前には多くのメディアが主要3候補者が接戦を繰り広げていることを伝えており、自分の一票で主要3候補者の当落が決まるかも知れず自分の一票の価値が高まったように感じられた、(3)有権者の投票に対する考え方は年齢により異なるが、今回は18歳選挙権が導入された後の初めての都知事選であったため、主権者教育を施され投票に関する意識が高まった18歳有権者の政治参加へのモチベーションが参議院選挙後も保たれ続けた可能性がある、(4)前回選挙ほどは天候が悪くなく天候の面では投票コストが低くなった、などの点を指摘できるだろう。


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