2024年4月24日(水)

地域再生のキーワード

2017年5月14日

養殖したアワビ

 さらに蜂谷さんは、青のり栽培に使った後の海洋深層水の再利用も考えた。この水で、アワビやトコブシを養殖するプランを作ったのだ。青のりの生育で海水中の栄養分が吸収されると海水が浄化されるため、それを貝類の養殖に使うことができると、目を付けたのだ。

 大学の卒業が迫り、一般企業への就職も考えた。だが、「プラン」で描いた室戸の漁業再興が忘れられない。室戸に通っていた蜂谷さんは、地元のお母ちゃんたちにかわいがられる存在になっていた。食事に呼ばれたり、魚をもらったり。

 都会に出て行った自分の息子の身代わりのように面倒を見る人もいた。人懐っこい性格の蜂谷さんは地域にすっかり溶け込んでいった。

室戸に仕事を作ろう!

 そんな折、「室戸には仕事がないからね。大阪にでも出て行かないと仕方ないね」という女性たちの声を耳にする。それならば、室戸に仕事を作ろう。蜂谷さんはそう考えた。

 大学院に籍を置きながら、室戸でのビジネスが始まった。13年には一般社団法人「うみ路」を設立。青のりの養殖事業に乗り出すかたわら、室戸の魚などを使った商品開発に乗り出した。「むろっと」というサイトも立ち上げ、通信販売にも乗り出した。

養殖の現場

 室戸岬沖は深海から海水が湧き上がる「湧昇流」と呼ばれる世界でも珍しい海流がある。このため、漁業資源が豊富で、様々な種類の魚介類が獲れる。ところが、小ぶりのソウダガツオなどが大量に獲れると価格が暴落、1本20円くらいにしかならない。地元の漁師が好んで食べる美味い魚にもかかわらず、鮮度が落ちるのが早いため、保管がきかない。これを保存できる最終商品に加工できないか─。


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