2024年4月26日(金)

ひととき特集

2016年9月1日

 合原 石の形にも結構個性がありますよね。

 重森 何かしらの意図はあったでしょうね。ぎざぎざした石だけでつくると、とんがった感じの庭になるんですが、1石でも角の取れた石を使うと柔らかい感じになります。そうした表現方法も絶妙です。

 合原 そういえば、どこから見ても石がひとつ隠れるというのが、石庭の代表的な謎だったと思いますけど、重森先生は、全部見える場所を見つけられてましたね(笑)。

「3」が一番強い!?

 ─石の数と禅宗は、関係がありますか。

 芳澤 むしろ日本古来の数字に対する考えが大きいんじゃないかな。数字を特定して何かを表現する発想は、室町時代の禅宗にはないと思います。

 合原 実は、七五三は数学的には面白い数字でして、「シャルコフスキーの定理」*13というのがあって、これは一定周期である値の並びをくり返し取る周期解に関するものですが、その周期の構造を調べると、すべての自然数の中で3が一番強くて、次が5で、その次が7です。

 重森 こんな数学的な龍安寺石庭の解釈、今日初めて聞いたんですけど(笑)。仏塔や供養塔などは1・3・5・7・9……と奇数で構成されますし、陰陽道でも、現代的な数学で解釈すると、奇数の3・5・7という数字になる。つながっているんですかね。

 芳澤 解決できたと思って表現したら、また離れていく、そういう繰り返しですよ。

 松山 「瓢鮎図」と一緒ですね。絶対的な答えはなく、おのおのが考えて深めていく。

 芳澤 「つかめたぞ」と言ったら、多分違う。ナマズみたいに逃げてしまうね。

*13 ウクライナの数学者・シャルコフスキーが 証明した定理。ひとつの実数を連続的に変換する写像では、周期3の解があればすべての自然数の周期解がある。周 期5の解があれば3以外のすべての自然数の周期解が、周期7の解があれば3、5以外のすべての自然数の周期解がある。この意味で、すべての自然数の中で、 3、5、7の順に強い。

退蔵院「余香苑(よこうえん)」にて。中根金作の設計により昭和40年(1965)に完成した昭和の名庭で、瓢鮎図にちなみ、瓢箪池にナマズが一匹泳いでいるという

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