2024年4月20日(土)

田部康喜のTV読本

2016年8月14日

 「ウォー!」――腹の底から絞り出すような叫び声は、前のめりにしなった身体から発せられる。

 大手システム開発会社の社員である、藤堂新一(藤原竜也)は、何者かによって社会的な存在を抹殺された。

 ビルの屋上に呼び出された新一は、スピーカーから流れる誰かわからないように加工された、音声によって脅迫される。

 「我々で組んで世界を支配しよう」と。

 「断る」という新一の胸に、射撃の的を絞るレーザービームが照射される。

 「それじゃあ、しょうがない。前へ進め! 飛び降りてもらおう」

 「わかった、待ってくれ!」

「君はいったい誰なんだ?」

 日本テレビ「そして、誰もいなくなった」(毎週日曜・夜10時30分)の第1回(7月17日)の冒頭は、いまや日本を代表する舞台俳優でもある藤原の劇的な演技で幕を開けた。ドラマは、時間の針を10日前まで戻して、新一がどうしてこうした状況に追い込まれたのか遡っていく。

 会社の役員に呼び出されて、「君はいったい誰なんだ?」と詰問される。

 藤堂新一の公的なパーソナルナンバーの登録者は、同名で婦女暴行容疑者の男だった。

 「えっ! 僕が藤堂新一ですけど……」と答える新一に対して、役員は「事情が明らかになるまで自宅謹慎を命じる」と冷たい言葉を投げかける。入館証もすでに無効である。

 さらに、銀行のキャッシュカードもクレジットカードも使用できなくなった。婚約者の倉元早苗(二階堂ふみ)を母親の藤堂万紀子(黒木瞳)に紹介するため、会食をした費用の決済がカードではできず現金払いするしかなかった。


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