WEDGE REPORT

2016年8月15日

»著者プロフィール

対外テロ機関「エムニ」の脅威

 ISの劣勢はシリア、イラクだけではない。ISが拠点化を図ってきたリビアの地中海都市シルトは8月10日、暫定政府支援の民兵軍団にほぼ奪回された。ISの生き残り戦闘員が市内の3カ所でか細く抵抗しているものの、完全制圧も時間の問題だ。

 シルトへの攻撃には米軍も深く関与。米軍は民兵軍団を支援して8月の始めの1週間で、約30回にわたってIS拠点を空爆した。民兵軍団は地中海に逃れるIS戦闘員を阻止するため船舶を出して海上でも警戒しているが、シルトにいた戦闘員は6000人と言われており、掃討作戦はしばらく続きそう。

 またアフガニスタンとパキスタン地域のISの指導者ハフィズ・カーンが7月26日、アフガン東部ナンガルハル州での米空爆で死亡していたことも明らかになった。ISは中東各地や欧州だけではなく、アジアにも勢力拡大を図っていただけに、カーンの殺害は大きな痛手と受け止められている。

 こうして世界各地でISが追い詰められている中、欧米の治安機関の間ではISの対外テロ作戦機関「エムニ」が本部の指令を受けて本格的なテロ活動に出るのではないか、との懸念を深まっている。「エムニ」はISの内部秘密警察と対外部門が一緒になったような組織。IS公式スポークスマンのモハマド・アドナニが束ねている。

 出身地や言語などによって「欧州部隊」「アジア部隊」などに分かれており。これまでも「エムニ」の工作員が昨年のパリの同時爆破テロ、今年のブリュッセル国際空港自爆テロを起こしたことが分かっている。

 欧州の捜査資料として報じられているところによると、これまで「エムニ」の工作員が欧州、アフリカ各国の他、バングラデシュ、インドネシア、マレーシアに送られたとされている。邦人7人が殺害されたバングラデシュの飲食店襲撃、8月初めにはシンガポール標的テロが発覚しており、アジア各地でも「エムニ」の活動が活発化すると憂慮されている。

 特に欧州の治安機関が追跡しているのがアドナニの2人の副官、フランス国籍のアブ・ソウレイマネと、シリア人のアブ・アハマドだ。2人は海外に送り込む「エムニ」の戦闘員の選抜、標的の選定、工作員の後方支援などを担当していると見られている大物だ。

 米紙によると、シリアからの難民に偽装して欧州で逮捕された男の1人は、アブ・アハマドによってトルコのある携帯電話番号を与えられていた。その番号は昨年のパリのテロ事件で、フランス競技場で自爆して吹っ飛んだ男の片足のズボンのポケットから見つかった番号と同じものだった。

  
▲「WEDGE Infinity」の新着記事などをお届けしています。

関連記事

新着記事

»もっと見る