2024年4月19日(金)

したたか者の流儀

2016年8月20日

 リヒテンシュタインやモナコと同様アンドラはタックスヘイブンだが、パナマ文書以来、風向きが変わってきている。アンドラはピレネー山脈の利点を生かして、スキー場ビジネスで生き残ろうとしている。8万人程度の人口ではタックスヘイブンであっても、金融のためのインフラは整えることは困難であろう。

小さな独立国の魅力

 スイスとドイツの間にあるリヒテンシュタインもかつてはタックスヘイブンで名前を成したが、ドイツ政府にもにらまれ、パナマ文書の影響も受けて、別の産業を考える時に来ている。リヒテンシュタインの街はどこだと探しても見つからず、仕方がないので郵便局で切手を買って帰った記憶がある。あとで、そこが街の中心だと分かった。そうはいっても、秘密兵器が一つある。日本でいえば電動工具のマキタにあたる会社でHILTIとよばれる。調べれば調べるほど優良会社にみえる。日本でも高級電動工具としてときどき見かける。

 小さな独立国は、それぞれ魅力がある。のどかな時代には数々の税を廃止して世界から富裕層の資金を取り入れていたが、昨今マネーロンダリングの疑いや、税回避の疑いの目を向けられてしまい、何か他に生きる道を探さねば生きて行けないのであろう。

 その昔、EUでもECでもなくEECだったころ、ルクセンブルグは、EECの排気塔と言われていた。その後ドイツ政府などの強い要請で、ルクセンブルグは源泉税を導入するなどして排気塔の役割をやめた。比較的安定した人口構成なので国際的な投資信託の寄留地として、アイルランドとその地位を争っている。ジャージー島やガンジー島、マン島は独自の通貨を持っているが、所詮英国の属領である。わが国でも公募外国投資信託の本拠は属領を認めずとなっており、ルクセンブルグに大きなビジネスチャンスをもたらしている。

 パナマ文書問題が発覚して以降、タックスヘイブンで稼いでいた小国の生き方が注目されている。欧州でいえば、属領は別にしてもアンドラとリヒテンシュタイン、サンマリノ、モナコ、バチカンであるが、人口が数万人の国の生き方について対応が迫られる。バチカンはともかく、その他の国は節税談義以外に人に語れる何かを提示する必要に迫られているようだ。それらの国をすべて制覇したことを自慢にしていたが、日本人にとってはどの国も行くだけでワクワクする。

  
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