海野素央のアイ・ラブ・USA

2016年8月23日

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海野素央 (うんの・もとお)

明治大学教授、心理学博士

明治大学政治経済学部教授。心理学博士。アメリカン大学(ワシントンDC)異文化マネジメント客員研究員(08~10年、12~13年)。専門は異文化間コミュニケーション論、異文化マネジメント論。08年及び12年の米大統領選挙においてオバマ陣営にボランティアの草の根運動員として参加。16年米大統領選挙ではクリントン陣営に入る。著書に「オバマ再選の内幕―オバマ陣営を支えた日本人が語る選挙戦略」(同友館)など多数。

 現地リポートの2回目は、「クリントン陣営のトレーニング(2)」です。
クリントン陣営には、戸別訪問(キャンバシング)のベスト・プラクティス(最高のやり方)に関する台本が存在しています。その台本に基づいて、有給のスタッフとボランティアのリーダーが筆者のような運動員を対象にトレーニングを実施しています。同陣営は、戸別訪問のやり方を「やるべきこと」「やってはならないこと」及び「覚えておくこと」に分類しています。

選挙対策事務所開き(筆者撮影@バージニア州フェアファックス市)

 本稿では、クリントン陣営の戸別訪問のやり方を紹介します。その上で、表現の自由と戸別訪問について考えてみます。

やるべきこと

 まず、戸別訪問で「やるべきこと」から説明しましょう。2012年米大統領選挙におけるオバマ陣営と同様、クリントン陣営もボランティアの運動員に対して、「有権者名簿にリストされている有権者を全員訪問する」ことを強調しています。というのは、ボランティアの中に標的となっている有権者をすべて回らず、やり残してしまう運動員がいるからです。前回の大統領選挙で、リストされた有権者の10%ぐらいしか訪問しなかった運動員がいました。筆者は自分の担当地域に加えて、彼の訪問地域にも赴き有権者の家のドアを叩いて、名簿を仕上げなければなりませんでした。

 次に、当然ですが「好意的な態度で標的となっている有権者に臨む」があります。さらに、「有権者の家のベルを鳴らしてからドアを2回叩く」もルールの一つです。「台本を棒読みせずに、自分の言葉で心から語る」は、効果的なコミュニケーションをとる上で欠かせません。前回の「クリントン陣営のトレーニング(1)」で説明しました「コミットメントカード(約束カード)を回収する」は、クリントン陣営の戸別訪問における最重要課題となっています。

 以上に加えて、正確にデータを収集するように指示が出ています。標的となっている有権者が不在の場合は「NH(Not Home)」、死去は「DC(Deceased)」、スペイン語のみ話すは「SP(Spanish)」、移転は「MV(Moved)」のそれぞれの欄にチェックを入れます。スペイン語のみ話す有権者に対しては、ヒスパニック系の運動員が後日訪問することになっています。11月8日の投票日直前に、移転した有権者の家を訪問しないように、予め把握しておく必要があるのです。

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