前向きに読み解く経済の裏側

2016年8月29日

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塚崎公義 (つかさき きみよし)

久留米大学商学部教授

1981年、東京大学法学部卒業後、日本興業銀行(現みずほ銀行)に入行。主に調査関連部署に勤務した後、2005年に銀行を退行して久留米大学へ。著書に『増補改訂 よくわかる日本経済入門』(朝日新書)、『老後破産しないためのお金の教科書』(東洋経済新報社)、『世界でいちばんやさしくて役立つ経済の教科書』(宝島社)、『なんだ、そうなのか! 経済入門』(日本経済新聞出版社)など多数。

インターネットと携帯電話が無かった時代より
今の方が生活が豊か

 しかし、圧倒的に重要なことは、昔の生活の不便さを忘れてしまった(若い人はそもそも知らない)ことでしょう。バブル期には、インターネットは普及していませんでした。若い人は、「インターネットの無い生活」を想像してみて下さい。調べごとをするために図書館へ行ったり、飲み会の日程調整で全員に電話をして都合を聞いたり、大変だったのです。

 携帯電話もありませんでしたから、待ち合わせに遅刻すると、相手に連絡をとることができずに、様々なトラブルが起きたりしましたし、「彼女の家に電話をしたら父親が受話器をとったので困惑した」男の子も多かったはずです。

 じつは、当時も携帯電話は存在していたのですが、「マスコミ関係者が事故現場に持っていくために何キロもある電話機を担いで行った」というもので、値段も非常に高かったはずです。買おうと思わなかったので、値段は調べませんでしたが(笑)。

 当時は、インターネットや携帯電話を知らなかったので、無くても不便だとは思いませんでしたし、当時の方が美味しいものは食べていたと思いますし、将来の夢を語ることも容易でしたが、今から当時の生活に戻れと言われたら、筆者は非常に困惑するでしょう。

 ゲームについても、ファミコンのスーパーマリオが登場して大騒ぎになっていた時代に戻りたいとは思いません。カメラで写真を撮ったら、フィルムを現像に出して戻ってくるのを待つなんて、嫌です。

 新製品が登場した時の実質GDPの計算は複雑ですが、「新製品が出来て生活が便利になった分は実質GDPが増える」ように計算がなされていると考えて良いでしょう。GDPが当時より大きいという事は、「美味しい物は食べていないけれど、それを上回るハッピーな生活をしている」という事なのです。

 そうです。「バブル期なんかに戻りたくない」と思うほど、素晴らしい生活を我々は享受しているのです。日々の生活で豊かだと感じることは少なくなりましたが、実は我々の生活は豊かなのだ、ということは、しっかりと認識しながら暮らしたいものです。
 

  
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