ドローン・ジャーナリズム

2016年9月7日

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木村正人 (きむら・まさと)

ジャーナリスト

在ロンドン国際ジャーナリスト。元産経新聞ロンドン支局長。米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員、慶應義塾大学法科大学院非常勤講師などを歴任。2012年独立。著書に『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)

 アルプスの登山客から年1000件もの救助要請があるため、山岳地帯の捜索・救助活動にドローンを本格活用する研究も進められている。ヘリコプター代わりに使えるドローンは低予算で人手不足を解消できる便利なツールなのだ。

 英イングランド南西部のデボン・コーンウォール警察では昨年12月から6カ月間にわたって中国DJI製ドローン「インスパイア1」4機の試験運用を開始した。アンディー・ハミルトン警部は「低コストで行方不明者の捜索、現場撮影、交通事故の状況把握が行えます。崖や森林、原野での捜索、密猟や銃器を使用した事件でも重要な情報を迅速に、しかも安全に集めることができます」と期待を寄せる。現機種は夜や、強風、雨天では飛ばすことができず、限界もある。ハミルトン警部を含む5人が英民間航空局の資格を持っているが、もっと多くの署員がドローンを運用できるよう計画を練る。

 ロンドンの映画学校「メット・フィルム・スクール」で映像の作り方を学ぶ野崎真志さん(29)もドローンを使った空撮に夢中になっている。日本で購入したDJI製「ファントム3」を英国に持参した。「英国でも飛行禁止区域はありますが、東京23区に比べるとまだ自由にドローンを飛ばせます。中国のドローン技術は驚くべきスピードで進化しています」という。将来、ドローンを使ったプロモーション映像を仕事として手がけたい野崎さんは英国で商用利用免許を取得する計画だ。

 英大手電器チェーン「マップリン」だけでも昨年1万5000機ものドローンが販売された。「商用利用免許取得者は英国で1769人。免許を取得するトレーニング・コースの受講者数は順調に伸びています。農業がいち早くドローンを取り入れ、自動配達の可能性も注目されています。英国も前向きに施策を進めています」とドローン運用会社ConsortiQのジョン・ゴアさんは解説する。

原発上空への「領空侵犯」など増加するトラブル

 今年4月、ロンドン・ヒースロー空港で着陸寸前の旅客機に物体が衝突する事故があり、「ドローンと旅客機が初めて空中衝突?」と大騒ぎになった。結局、ドローンではなかったものの、ドローンと旅客機のニアミスは頻発している。英航空操縦士協会によると、昨年報告されたニアミスは29件。今年は上半期だけで26件にのぼっている。英国では空港周辺でドローンを飛ばすと最長5年の禁固刑が科されるが、不届き者は後を絶たない。ドローンが墜落して赤ちゃんが片目を失う事故も起きている。

 パリでは昨年、夜間にエリゼ宮、在仏米国大使館、エッフェル塔などの上空を飛行するドローンが目撃された。14年にはフランスにある19カ所の原発のうち13カ所の上空をドローンが飛行していた。原発へのドローンの「領空侵犯」は夜を狙って行われ、入念に計画されていた。ドローンで施設内の写真や動画を撮影すればテロ準備のための情報が収集できる。原子炉より構造が弱い使用済み核燃料貯蔵庫に爆弾を落とすシナリオも考えられる。

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