前向きに読み解く経済の裏側

2016年9月3日

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塚崎公義 (つかさき きみよし)

久留米大学商学部教授

1981年、東京大学法学部卒業後、日本興業銀行(現みずほ銀行)に入行。主に調査関連部署に勤務した後、2005年に銀行を退行して久留米大学へ。著書に『増補改訂 よくわかる日本経済入門』(朝日新書)、『老後破産しないためのお金の教科書』(東洋経済新報社)、『世界でいちばんやさしくて役立つ経済の教科書』(宝島社)、『なんだ、そうなのか! 経済入門』(日本経済新聞出版社)など多数。

自分を客観的に評価できない国民を相手にすることの苦労も

 人間は、自分を客観的に評価するのが苦手です。人々に「あなたは字(あるいは運転等々)が上手な方ですか?」と聞くと、半数以上が「はい」と答えるのだそうです。人事評価に不満を持つサラリーマンが多いのも、半分以上の人が「自分は仕事が出来る方だ」と思っているからなのでしょう。

 そうした中で、たとえば自由貿易協定を締結したとします。輸出が減った農家は「自由貿易協定のせいだ」と怒りますが、輸出が増えた製造業は「自分の努力が報われた」と考えがちです。景気対策を打てば失業者が減りますが、減った失業者は「政府のおかげだ」とは考えません。「自分が真面目に求職活動をしたから仕事が見つかった」と理解するわけです。そうなると、「景気対策で財政赤字が増えた」という批判だけを受けることになります。

 以上のように、意思決定者は「自分の保身を考えると実施すべきではない案件」でも、人々のために必要なものは実施するべき、という難しい立場にあるのです。

 政府の個々の政策には様々な賛否があると思いますし、反対の時は反対意見を明確に述べるべきだと思いますが、賛成反対とは別の次元で、政府がこうした苦しい選択をしているのだ、という事を考えながら、その責任を負って日本のために頑張ってくれているという事には、素直に敬意を表したいと思います。

 

  
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