したたか者の流儀

2016年9月4日

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パスカル・ヤン (Pascal Yan)

著述家

著述家。ルーヴァン・カトリック大学大学院中退(ベルギー)。証券マンとして25年間、欧州を中心に海外で過ごす。現在の職業は都内大学教授。

 

 観光客が消えた途端、パリの人がとっても親切になった気がする。ホテル、お店、タクシー、お客のありがたさを身に染みているのだろう。もちろんテロが原因だが、いかにしてこんなことになったのだろうと自問しているように見える。

 英国も、離脱を支持した人は、ポンドの下落でこの夏ポルトガルやスペインで後悔しているに違いない。昨年より二割、ものが上がっている感覚だろう。ロンドンでは不動産屋の前で、自分のアパートの値下がりで愕然としたことであろう。投資の心得がある人も英国不動産リート投資で後悔している。それぞれがBREXITについて反芻している。一日何百億円もEUに支払っていると聞き、それをみんなに回せば幸せになると思ったのだろう。しかし、数字が違っていたと投票後に言われても困る。国民投票を悔やんでいるのだ。

 保守党のスター政治家として登場、映画にもなるノティングヒルの自宅でセレブ生活を楽しんでいた前首相に対する恨みも骨髄だ。一方、新首相は、EU離脱は表層的な事態で、深刻な問題はむしろ格差だと明言している。格差問題を生涯の課題とするようだ。

財布は右に、言葉は左

 一方のフランスも8000万人もの外国人観光客が毎年やってくる国だった。テロのおかげでパリは閑古鳥となっている。日本でいえば京都のように媚びない観光立国で成功しており観光資源は腐るほどある。剛腕の大統領が出れば一度に解決することができる。2017年は大統領の選挙の年だ。ドゴール時代7年の任期であった。ミッテランも二期14年やった。シラクの英断で5年にしたため、社会党オランド大統領は来年任期切れとなる。

 財布は右に、言葉は左のフランス人も背に腹は代えられないようだ。右でも左でもいいから何とかしてくれとなる。オランドの前の大統領二コラ・サルコジはシラク政権下で内務大臣として警察を管掌し、移民追い出しの実績をあげたことをみんな覚えている。不法滞在者をまとめて、祖国に送り返してしまったこともある。パリの多発テロもベルギーからの越境者によるものだ。サルコジがそれなりのポジションにいたらこんなことにはならなかったと内心考えているホテル経営者やカフェのオーナーは多いのではないか。自らハンガリー移民の子サルコジはすべてにわたって強硬派だ。

 ここ数日、満を持してサルコジの2017年の出馬が具体化してきた。そもそもフランスでは社会党でも、“共和党”でも大差はない。バラの花をシンボルにするかしないかの差でしかない。共産党は1980年代まで生息していたが表舞台からは見えない。一方、右派の人気者父ルペンは際物とされたが、娘ルペンはさらに雄弁で目がはなせない。

 自由、平等、博愛と昔習った。今、自由はあるが平等は既にない。もうすぐ博愛も消えるか見ものだ。されば、この国は自由しかないジャングルとなる。今のところサルコジ人気はいまいちのようだが。ヴィヴ・ラ・フランス。

  
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