2024年4月19日(金)

オトナの教養 週末の一冊

2016年9月5日

 歌舞伎町はキャバクラやホストクラブなどの接待型風俗営業、あるいは性風俗営業にしても客が自ら現地に赴き、お店でサービスを受けるところが特徴で、これは「オン・サイト型」です。オランダのアムステルダムにある「飾り窓地区」や、大阪の飛田新地も同じタイプで、現地に足を運び、女性を選び、サービスを受けます。

 ただ、アムステルダムや飛田新地と歌舞伎町が違うのは、中が外から見えないこと。アムステルダムや飛田新地では、通りから見える店の入り口近くに女性たちが並んでいて、容姿や店内の一部を確認することが出来るのに対し、歌舞伎町の店は雑居ビルに入居していることが多く、中に入るまでどんな女性や、あるいはホストクラブであれば男性が、サービスをしてくれるのかわからない。札幌のススキノも同じような特徴を備えているので、日本の歓楽街のひとつの特徴と言えるかもしれません。

――ウェブや雑誌で調べてお目当ての店に行くことも出来ますが、歌舞伎町の場合、数多くの客引きがいて、彼らに案内され店に連れて行かれるパターンもあります。武岡さんの『歌舞伎町はなぜ〈ぼったくり〉がなくならないのか』でも、客引きとぼったくりの密接な結びつきについて改めて指摘されていますが、そもそもこの客引きについて馴染みのない方もいるので説明していただけますか?

武岡:本書の中では客引きを3種類に区別しています。飲食店やカラオケ店などの風俗営業店以外の店員による客引き、風俗営業店の店員による客引き、店に所属しないフリーの客引きの3つです。

 上記の初めの2つの客引きは、「安くしますよ」などと近寄ってきて、最終的には自分が所属している店へ呼び込む機能を持っています。

 それに対し、3つ目のフリーの客引きは特定の店の従業員として働いているわけではなく、客のニーズに応じて、基本的にはどんな店にも案内します。例えば「キャバクラどうですか? 1時間3000円ですよ」と声を掛け、客が同意すればキャバクラへ連れて行き、後にバックと呼ばれる報酬を店側から受け取ります。ただ、歌舞伎町の客引きのほとんどがぼったくりだとも言われていますので、実際には3000円ではなく数万円から数十万円を請求される事態も起きてくることになります。

 また、客が「今日はキャバクラの気分じゃない」と答えれば、客の嗜好を聞き出し他の業態の店に案内します。

 歌舞伎町での聞き取り調査によれば、歌舞伎町の中央を東西に走る花道通りには、店付きとフリー合わせて1000名近くの客引きがいると言われ、フリーの客引きが案内先として関係を持つ店舗数は300~400店とも言われます。ただし、風俗営業店の客引きは法令によって明確に禁止されています。


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